大崎会長や松本らを主流派、加藤に賛同する東京吉本出身の中堅・若手芸人を中心とするグループを改革派とするならば、いわば中立派ともいえる3つめの勢力の旗頭、それが明石家さんま(64)である。若手芸人が匿名を条件に明かす。
「今、多くの若手芸人の間には、松本さんに対する不信感があって‥‥。松本さんは、メディアなどで自分が事態収拾のために奔走しているようにふるまっていますが、少なくとも若手や後輩芸人には、まったく動いている様子が伝わってこないんです。逆にさんまさんは、不安を抱く若手芸人に電話したりしていろいろフォローしてくれている。表立ってはまったくアピールしていないので『さすがはさんまさん!』という空気になっているんです」
さんまといえば、騒動直後から、
「フリーになった宮迫をうちの事務所に欲しい」
とコメントしていた。スポーツ紙芸能デスクが解説する。
「さんまは、大崎さんが社長に就任した09年前後に、現在の個人事務所を立ち上げています。これは節税目的でもあるんですが、最大の理由は、会社の言いなりにならずに済む立場を獲得するためでした。業務提携に近い関係になって、仕事やスケジュールを自分で取捨選択できるようにしたんです」
つまり、さんまの個人事務所に入れば、ある種、吉本興業から解放されることを意味するのである。
「実際に宮迫がさんまの事務所に入るかどうかは、今のところ実現性は低い。ただの経理専門事務所みたいなものですからね。それに宮迫は、松本とは連絡を取っているようですが、さんまには騒動後に連絡していないそうですから」(メディア関係者)
しかし、さんまが宮迫をはじめとする「大崎吉本」に不満を抱える後輩芸人の救済に本腰を入れるつもりになれば、様相は変わってくる。こんな指摘をする向きもあるのだ。
「現時点でさんまの個人事務所には大量のタレントのスケジュールをさばけるマネジメントスタッフがいないことは確かですが、そんなものはどうにでもなります。さんまは『こじれた場合は俺が引き受けてもいい、と岡本社長に伝えた。それで会社を辞めろ、と言われてもしかたない』と自身のラジオ番組『ヤングタウン土曜日』(MBSラジオ)で公言しています。宮迫は確かに松本に恩義がありますが、さんまとも良好な関係ですし、本当にさんまが吉本から独立すれば、ついていくメディア露出の多い若手芸人はいくらでもいるでしょう。野党共闘ではないですが、宮迫らだけでなく加藤らの非主流派が合流して吉本が完全に二分されるケースが考えられるんです」(キー局幹部社員)
さんまのかつての「戦友」として知られ、11年に反社会的勢力との交流が発覚して引退した島田紳助(63)は、今回の騒動後に複数の週刊誌から直撃されて、次のように答えている。
〈吉本では、会社と芸人は親子、言うたやろ。せやから、喧嘩してもぜったいに仲直りできるはずや。(中略)円満に、いい親子関係に戻ってほしい。それだけが願いやな〉(「週刊新潮」8月1日号)
しかし、その紳助とも会社の将来について電話で話したと明かしたさんまは、また別の意見を持っているのだ。7月27日放送の「ヤングタウン土曜日」でこう発言している。
「みんなは元に戻そうとすんねんな。『昔の吉本に』とか。昔は昔やし。言うとくけど、吉本が元に戻ったところで、今のまたこの状況になんねんど。今みたいな記者会見になんねん。だから、元に戻さんほうがええねん」
軽薄さが身上のさんまにして、この発言は岡本社長のそれとは違い、まるっきりの冗談だとは思えない。それぞれの思惑や立場による駆け引きが同時進行し、吉本興業という「巨大芸人組織」の未来は揺れ続けている──。