「第7回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞は‥‥『白蛇抄』の小柳ルミ子!」
本格的な女優活動の2作目にして、ルミ子は頂点に立った。さらに──、
「アカデミー賞の授賞式とベストテンが同じ日だったんですね。だから私は主演女優賞のトロフィーを抱えて、アカデミー賞の会場から『お久しぶりね』を歌う形になりました。歌手と女優の2つの栄誉を同時に味わえて、こんな経験はなかなかないことだと、今でも誇りに思います」
盟友の杉本真人とは、昨年もジョイントコンサートを開催するなど強い絆が続いている。
ルミ子と同じようにデビュー曲から大ヒットを記録したのは、堀江淳の「メモリーグラス」(81年4月)だった。印象的な「水割りをください」の歌い出しは、実体験に基づいている。
「デビュー前に札幌のスナックでバイトしていたんですよ。当時はウイスキーの水割りが全盛期で、ほとんどのお客さんが『水割りをください』でしょ。その言葉が頭に残っていたんだと思います。ちなみに、僕自身は水割り派ではないのですが(笑)」
堀江の中性的なルックスや、女心を綴った詞の内容から、水商売の女性たちから火がついた。各地の有線で急上昇を重ね、番組には81年7月30日に初ランクインを果たす。ただし、スタジオに駆けつけることは少なかったという。
「ニューミュージック系だったので、事務所の意向でなるべくほかの歌手の方たちと交流しない。だから中継がほとんどでしたね。山梨ではぶどう園から中継が入って、僕が歌う前に早食い王者の人が一房のぶどうを食べるんです。たった一口で飲みこんでしまって、あれは衝撃でしたね」
歌のイメージと直結しないのは、いかにもベストテンらしい“異色の演出”であろうか。さて同曲は9週にわたってランクインを続けるロングランになったが、少しずつ異変が起こった。それは、サビのキーをつらそうに歌う堀江の姿だった。まだ経験が浅かったため、バンドの生歌で再現することを考慮せず、ギリギリの高さで録音したことの弊害だったと笑う。
「あの9週の間に同時にランクインしていたイモ欽トリオや石川ひとみちゃんと、最近になって仕事する機会が多いんです。僕はスタジオに行くことは少なかったけど、やはり『同じ時代』ということで話は合いますね」
その翌年は「花の82年組」と称される空前のアイドルブームが起こった。松本伊代、堀ちえみ、石川秀美、中森明菜、小泉今日子、早見優──そして男性陣では「シブがき隊」がデビューし、ランキングを競った。
フックンの愛称で親しまれた布川敏和は、同年の5月20日に「NAI・NAI16」(82年5月)で初登場した瞬間を鮮明に記憶している。
「ちょうど初主演の映画を撮っていて、ロケ先の伊豆から中継。小さい頃から家族で観ていた番組だし、メンバーもスタッフも大はしゃぎ。ヤックン(薬丸裕英)は気合いが入りすぎて、足を上げる振付けで後ろに引っくり返りましたから」
スタジオでの初登場は、誰が先にミラーゲートをくぐるかジャンケンで決めたという。