いきなり、難しい舵取りとなりそうだ。
来季、プロ野球は東京五輪による混乱や球場施設理由の関係などから、開催期間中の中断を決めている。そのため、来年のペナントレースの開幕戦も一週間ほど前倒しされる。その影響をもっとも被りそうなのが、巨人。それも、指導者一年生の阿部慎之助・二軍監督だというのだ。スポーツ紙記者が言う。
「坂本勇人を始め、巨人の主力選手たちはマイペース調整となります。というのも、今年は、優勝決定がペナントレース終盤まで長引き、クライマックスシリーズ、日本シリーズと気の抜けない試合が続きました。主力選手たちは、その疲れも残っているので、原辰徳監督はキャンプ中盤まで二軍でスロー調整をさせるつもりなんです」
坂本、丸佳浩、小林誠司らは今年、プレミア12にも招集された。疲労感の抜けない体で春季キャンプをスタートさせれば、大きなケガにもつながりかねない。
「年明けにも、コーチ全員を集め、そこで主力選手たちのスロー調整を決める予定です」(前出・スポーツ紙記者)
マイペース調整をさせようとする原監督の考えは間違っていない。しかし、その調整中の彼らを預かるのは、阿部二軍監督だ。
「阿部二軍監督は若手を鍛えなければなりません。かといって、主力選手たちは完全な個人行動とはならないので、ランニングやノックなどは一緒。ただ、たとえば、ノック練習で、ノックする側が、キツイ打球を飛ばし鍛える必要がある若手と、ほぼ正面に打ってやる主力が一緒の練習になったら、阿部二軍監督はもちろん、若手の練習ペースも上がっていかなくなってしまう」(ベテラン記者)
もっとも、ベテランがキャンプ前半をスロー調整し、終盤から合流するのは、どの球団でも行われていること。当たり前のキャンプ光景かもしれないが、いつも以上に疲労の残っている主力選手と、若手を相手に、阿部二軍監督は指揮をとるとになるのである。
「もっとも、現役時代も、阿部は野手陣の自主トレをまとめたりもしていました。今年も1月下旬、巨人選手が宮崎入りを前倒しし、合同自主トレを行っていましたが、阿部はノックバットを片手にブルペン視察、フリー打撃、ノックを受けるグループを見て回り、その様は監督そのものでした。阿部が行くと緊張感も出ていましたよ」(前出・ベテラン記者)
となると、よけいな心配かもしれないが、スロー調整組の主力は緊張して、反対にペースが上がってしまうかもしれない。疲労しきった主力を“蘇生”させ、若手を育てる──そのさじ加減をうまくできるかどうかも、阿部二軍監督は問われそうなのである。
「年明け早々、一軍の監督、コーチが集合し、キャンプのスケジュールなどが話し合われます。阿部も二軍監督として意見を求められます」(前出・ベテラン記者)
いずれにせよ、“指導者一年生”の阿部は、早くもその手腕が試されることになりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)