山下芳生参院議員はこう話す。
「小売業の平均離職率は40%を超えています。そういう意味では、ユニクロが突出した数字ではないとも言えます。しかし、最大の問題は、精神疾患になっている社員が3%もいるという数字です。日本企業の平均的な数値は0.5%ですから、人間を破壊していると言ってもいいのではないでしょうか」
世界との勝負に負ける以前に、その過程で心を病んでしまう。それがグローバルカンパニーの苛酷な実態なのか。
前出・大宮氏は退職時の自身のことを回想する。
「町田店ではベテランスタッフに助けられ、何とかやってきました。その後、大型店に異動となり、オープン準備に入ったのです。でも、パンツの裾上げすらできない私が、スタッフにミシンの扱いを指導するのですから、オープン初日は大混乱となりました。それで、なえていた自信がついえていきました。遅刻が許されない会社なのに、起床できずに1時間も遅刻するようになってしまったのです」
それでも勤務を続けた大宮氏だが、退職の契機は皮肉なことに初めて仕事がうまく進んだことだった。
「精神的に追い詰められると、不思議と『辞める』という選択肢が思い浮かばないものなのです。ユニクロでは社員が在庫の状況、ノルマの達成、商品陳列など全てを考慮に入れたうえでスタッフのシフトを組みます。私は1度も上手に組めたことがなかった。それが一部だけど、上手に組めたのです。少しだけ自信が芽生えた時に、初めて退職の決断ができた」(大宮氏)
現在もユニクロ内には精神科を受診することもままならず、うつ状態のまま仕事を続けている社員がいるかもしれない。経済ジャーナリストはこう話す。
「ユニクロでは、こうした批判の高まりを受けて、過酷な社内競争を改める動きを見せています。社内には思い悩む社員のための相談窓口もあり、うつ病と診断されれば、すぐに休職も可能です。しかし、最大の問題は通常の企業なら休職期間の補償が2年間は約束されているのに、ユニクロでは休職した社員のほぼ100%が休職から数カ月内に退職していることです。不祥事が表ざたになることを恐れているとも思える状態なのです」
もし、我が社が「ユニクロ化」していると感じたら、心のケアと休職制度を要確認である。アベノミクスのおかげで、会社員はまもなく世界と社内で熾烈な戦いを強いられることになるのだから‥‥。