東京五輪に、栄和人監督はどうかかわっていくのだろうか。
レスリングの全日本選手権(12月19日~22日)で、至学館大学の監督に復帰した栄氏が、精力的な動きを見せていた。選手のセコンド役として直径9メートルの円形マットの周りを右に行ったり、左に行ったり。試合中、選手に向ける眼光は鋭く、インターバルの間にもアドバイスを送り…。その様子を見ると、大学側が「緊急の建て直し策」として栄氏を呼び戻した理由もわかるような気がした。スポーツ紙記者が言う。
「女子レスリングで知られる至学館大学は、奇しくも、栄監督が退いた昨年8月以降、成績がガタ落ちでした。全日本選手権は五輪代表の選考会も兼ねています。順調にいけば至学館大学は大勢の代表選手を送り込み、『女子レスリングの強豪校』のメンツも保てますからね」
しかし、本当の問題は五輪選手が決まった後に起こりそうだ。栄氏は大学の監督には復帰したが、昨年4月に日本代表の強化本部長職を引責辞任している。しかし、代表選手が強く求めれば、ふだん教わっている指導者の帯同もある程度まで可能となる。この点について、栄氏は「まだわからない」とアイマイな言い方をしていたが、日本代表選手たちへの帯同が決まれば、“会いたくない人たち”とも顔を合わせることになる。
「栄氏とそのパワハラ被害者となった伊調馨との関係ですが、伊調側の言い分が認められて決着が付きました。でも、両者のわだかまりはなくなっていません。伊調の側についた田南部力コーチは日体大の出身で、これまでの代表合宿は、至学館大学と日体大でぶつかり合っているところもありました」(レスリング関係者)
思い出されるのが、昨年6月に行われた復活を目指す伊調と、川井梨紗子との一戦だ。五輪代表入りにつながる世界選手権進出をかけ、川井が伊調に引導を渡した。川井は至学館大学の伊調の後輩にも当たる選手。当然、栄氏にも鍛えられており、メディアは当時、栄氏と田南部氏との代理戦争のようにも煽ったが、川井は「伊調さんを尊敬している。純粋に勝ちたかった」と反論した。
「栄氏には失礼ですが、今栄氏とかかわりを持つと、伊調との遺恨に巻き込まれると思っている選手、関係者も少なくありません」(前出・関係者)
女子レスリングは国内においては、世代交代を果たしたが、国際大会では未知数の選手も多い。
「栄氏はものすごい練習量を選手に課します。練習の量と質で、選手で鍛え上げていきました」(前出・スポーツ紙記者)
一方、全日本選手権前には、栄氏の教え子で後継者と目されていた吉田沙保里が、みずからのインスタグラムを更新していた。ハワイでサーフィンを満喫する様子である。栄氏を巡る騒動に巻き込まれたくないとするメッセージにも思えた。ともあれ、新世代の女子レスリング選手たちが競技に集中できればいいのだが…。
(スポーツライター・飯山満)