社会人野球における要人たちは“世界のアンダースロー”渡辺俊介監督に強い期待を寄せている。
昨年末に「日本製鉄かずさマジック」の指揮官に選ばれた渡辺新監督が、去る1月11日、指導者研修会を受講した。同研修会は社会人野球を統括する日本野球連盟が開催したもの。新任・留任問わず、受講必須のような位置づけの研修会だという。
元千葉ロッテの投手だった渡辺氏は、これで監督としての第一歩を踏み出したわけだが、かずさマジックの指揮に専念できないかもしれない。
「実は、社会人野球だけではなく、アマチュア球界全体とプロ野球の間で『棚上げ状態』になっている問題があるんです。東京五輪のことですよ」(アマチュア野球担当記者)
思い出されるのが、東京五輪の追加競技の当選に向け、野球・ソフトボールの両競技団体がスクラムを組んだことだ。野球はNPB12球団だけではなく、社会人、大学、高校野球など、アマ・学生団体も一緒に「野球の五輪競技復活」を訴えてきた。ところが-。
「今のところ、東京五輪はプロ選手だけでチーム編成されそうな雰囲気。アマチュア選手の出場枠が設けられてもおかしくはないのですが」(前出・アマ野球担当記者)
それだけではない。そもそも社会人、学生野球の大会は地方球場が舞台となることが多い。全国大会前の地区予選が特にそうだが、地方球場は老朽化も進み、地元自治体だけの力では改修工事ができない有様。プロ側も決して他人事とは思っていないが、資金援助に関する具体的な動きはまだ見せていない。そこで、プロ野球を経由した社会人チームの監督、それも渡辺氏のような知名度のあるOBにプロ側とのスクラム強化はもちろん、そのための仲介役になってもらいたいと、社会人野球の関係者が期待をよせているのだ。
「渡辺監督は全日本、都市対抗での優勝を目指すと意気込んでいました」(別の担当記者)
渡辺監督が全国制覇を成し遂げれば、発言力もますます高まる。そして社会人野球界の抱える球場問題も解決に向けて、大きく前進するはずだ。その意味ではやはり、まずは指揮官として専念することがアマ球界のためにも近道のようである。
(スポーツライター・飯山満)