恵庭市やさくら市の事例のような数百万程度の被害は氷山の一角。中には被害額数千万円に及ぶケースもあるという。
「いくら『出ないんです』と報告しても『おかしいですね、お客さんの打ち方が悪いんじゃないですか』などと丸め込まれてしまう。そのうえ、『もっと簡単でよく出るいいコースがある』と、登録変えを勧められ、数十万円をまたしてもズルズルとムシリ取られてしまうのです」(前出・徳田氏)
他人からすれば「なぜ気づかないのか?」と思うようなセールストークでも、振り込め詐欺同様、ダマシのプロの常套手段に被害者があとを絶たないのだ。「パチンコ必勝ガイド」元編集長でパチンコライターの大嵜一万発氏がさらに別の手口を明かす。
「打ち子詐欺の他に、『この打ち方で絶対パチンコに勝てる』攻略法を実際に売る『攻略法詐欺』もあります。数年前には、実際に攻略法を教えると言って堂々と呼び出すという手口の詐欺もありました。事務所に行くとパチンコ台が並べてあって、止め打ちをするなど指示どおりの打ち方をすると大当たりする。これは基盤を改造した台を実際に打たせて被害者を納得させるという大胆な手口です」
他に「携帯電話に特殊なメールを送るとパチンコ台が反応し大当たりする」「ホールコンピュータを遠隔操作し出玉を操作する」など、もっともらしい理屈でダマす手口もあるという。
「ダマし取る金額も、最初に30万円など大金を出させ、あとは『大金を投じて当たらなかったおわびに値引きしますから』とさらに数万ずつツマむものから、最初は無料で『攻略法』を教え、当たらずにいると『取って置きの方法がある』と100万円単位で出させる手口もある。まさに機を見るに敏な詐欺師の手口です」(前出・大嵜氏)
被害者がズルズルと金を引っ張られてしまうのは「毒を食らわば皿まで」の心境か「それだけ高額な攻略法であればきっと‥‥」と思い込んでしまうのか。
「最初の電話で運転免許証を確認されたり、志望動機を言わせたり“審査”をしたうえで『おめでとうございます。採用です』と伝えられたりと手の込んだ手口にダマされるケースもある。とにかく被害にあうのはパチンコに詳しくなく、そうしたことで催眠にかかりやすい人です」(前出・徳田氏)
前出・大嵜氏もこう警鐘を鳴らす。
「自分も素人の時はドル箱を20~30箱も積んでいるのを見て『パチプロだけが知っている裏技があるに違いない』と思っていました。こうした詐欺被害にあう人には『パチンコは裏操作や遠隔操作で出している』と信じて疑わない陰謀論者も多い。だから、それを特別に教えてあげると言われると、たちまち引っ掛かってしまうんです」
いわば、パチンコファンの「心の闇」に魔の手口は絶大な効果を及ぼすのだ。