当たりが出やすいようにプログラムを変更したBロムが仕組まれた基板を製造し、ホール側と取り引きする。ロムの改変にはさほど高度な技術を要せず、ひとたび裏ロムを製造してしまえば、あとは台湾など海外の業者に発注してコピーを1個1000円ほどの安値で作らせてしまうのだという。
「量産した人気機種の裏ロムを、パチンコ店に1台につき7万で卸して、売り子に3万の手取りを与えて商売するんだよ」
台を売れば売るほど、手元に現金が入ってくる。
そして、出玉を思いのままに調整したいというホール側の思惑で、後述する「遠隔操作」が生まれ、その技術がさらなる大儲けを呼び込むという寸法だ。
「遠隔操作に使う部品の設置は1台につき30万円。多い時は100台前後やるから、一晩で3000万円にもなる。半分の1500万円を子分の“設置部隊”に渡しても、1500万円入ってくるわけだ。仕事が終わった設置部隊をファミレスとかで迎えて、みすぼらしいコンビニの袋に入った、領収書なしの現金を受け取ったら、半分を分配してやる。系列店を多く抱えたチェーンの依頼なんかも来るから、ひっきりなしだよな。末端の設置屋でも月収100万円ぐらいはいく。俺? 年商10億だよ。それが10年は続いた」
まさに億万長者。つい数年前まで、X氏は「これが一生続けばいい」と、豪遊生活を謳歌していたという。
「10人前後の愛人にそれぞれマンションを与えて、毎月一人50万円ずつ小遣いを渡してた。仕事で他県にいても、タクシーで銀座に乗りつけて寿司を食ってはクラブに繰り出してたよ」
濡れ手で粟の収入を生み出す、巨大なグループの活動範囲は北海道から九州まで全国に及び、メンバーの総数は「もちろん100人単位じゃ収まらない。正確な数字はわからないけど、何千人ってところだね」とのこと──。
つまり、裏ロムがいかにそこかしこのホールに潜んでいるかという証左なのだ。
気になるのは、カバン屋とホール側は、いったいどのように最初の接触を持つのだろうか。
「そこんところは蛇の道は蛇というか、もともとが学校の先輩後輩で顔なじみだなんてケースが多いんだよ。というのも、パチンコ屋の経営者やカバン屋、パチンコ台メーカー内なんかにも、この業界は半島系が多いからな。結び付きが深いから、ツテをたどれば、仕事仲間には困らない。だからホールの社長の依頼で裏ロムができたってわけだ。ちなみにゴト師の連中は大陸系が多いね。あんなリスクを背負った仕事をするのは中国人だって話だ」
カバン屋との裏取り引きなど、やはりホール経営者はたくましい。あるホール関係者が明かす。
「出玉を集計するジェットカウンターを不正して、客1人につき5~6%抜いてる社長がいるんです。1人当たりは気づかない額だけど、勝った客全員分だと、かなりの金額が社長の小遣いになっていますよね」