さて、約20年間にわたって荒稼ぎしてきたX氏だが、現在はパチンコ市場からの撤退を決断しようとしている。その背景には、意外な事情があった。
「ひと言で言やあ、前ほど儲からなくなったってことだよ。2006年(7月)に北朝鮮がミサイルを日本海に落としただろ? あれを契機に取締りが厳しくなったんだよ」
パチンコ産業の裏業者が儲けたカネの一部が北朝鮮に流れていると疑惑の目が向けられ、当局のマークが強化されたのだという。
さらに、パチンコ産業全体に対する風当たりの強さは増し、このままでは食い詰める業者が裏表ともに増える一方と見られる。政令によって段階的に規制が進められてきた“MAX”機の撤廃が決まり、今、各ホールは早急な台の入れ替えを迫られているのだ。
当たり外れの波が激しくギャンブル性の高いMAX機は、ホールの経営を支える主戦力となってきた。大当たりを狙い、そのためには多少の投資もやむなしと割り切り、ついつい資金をつぎ込んでしまうのがギャンブル好きの習性であることは、言うまでもなかろう。
「大儲けしようとする客に逆に大損こかせないように、健全に遊びましょうというのが当局のタテマエだけど、本当は客のためなんかじゃなくて、ホール潰し狙いなんだよ。現に、(昨年末に)MAX機の規制が始まってから、ホールが次々潰れているからな」
かつては「30兆円産業」と言われたパチンコ産業だが、現在は20兆円を割り込んでいるとも言われる。
ホール潰しの裏には、“国策”が見え隠れしているとまで指摘する。
「裏業者ばかりじゃなく、表の企業も北朝鮮と結び付いていると、国が見ていることが一つ。もう一つ大きな理由として、国営カジノがあるんだよ」
つまり、現政権が合法化を推進する国営カジノにとって、多くのファンを抱えるパチンコ産業は競争相手として邪魔になる。国営カジノの合法化・解禁を前にホールを減らしておきたい意図が隠されているのだという。行き場を失ったパチンコファンを国営カジノの顧客に取り込むことが究極の狙いなのか──。
しかし、そうした思惑どおりにパチンコ産業が衰退の一途をたどるのかといえば、X氏は逆の見方を示す。
「商売上がったりになった連中がそのまま黙って泣き寝入りするわけがないよ。パチンコ屋の淘汰が進んでいく中で、新しい動きが出てくることは間違いない。そこでまた裏業者が暗躍するわけだ。だって国にとっても、パチンコ産業から得る税収は捨てがたいから、消滅することはないだろうよ。ズル賢いヤツが儲ける構図は永久に続くんだ」
パチンコ産業の表と裏の住人たちが複雑に絡み合い、ファンの知る由もないところで、闇のフィーバーは続いていく‥‥。