アベノミクス成長戦略の3本目の矢として注目を集め始めた「カジノ構想」。99年に当時の石原慎太郎都知事が提唱するも、実現まで至らなかった。しかし再び、「カジノ解禁」に向け、政財界、自治体の機運が高まってきている。最右翼は東京都と大阪府と言われる中、「東北に復興カジノを」という案が再浮上してきた──。
全国紙政治部記者が話す。
「今年1月、首相官邸で開かれた産業競争力会議で、安倍総理の参謀と言われる慶應大学の竹中平蔵教授が『カジノ・コンベンションの推進』を提案したほか、楽天の三木谷浩史会長兼社長も『海外マネーを引き寄せるサービス・コンテンツ作り』というタイトルで『カジノ開設、風俗営業法の緩和』を訴えました。つまり安倍政権の目玉政策として、カジノ推進を進めているのです」
アベノミクスとカジノと言うのは、にわかに結び付きにくいが、実は、安倍政権の成長戦略において、重要な位置づけとしてすでに政財界を巻き込み、動きだしているのである。
そもそも日本では、賭博行為が刑法185条で禁じられている。カジノ合法化のためには、法整備や制度改革などが急務となるが、長年にわたって法の壁を崩せずにきた。ところが、ここにきて、“ウルトラC”により、事態は一挙に進みだしているのである。全国紙社会部記者が解説する。
「法の壁を突破するために発案されたのが、ズバリ“特区構想”です。いきなり全国実施の難しい規制緩和や制度改革を一部の地域限定で認め、経済の活性化を図るというものです。カジノ解禁にしても、特定複合観光施設区域(特区)を指定し、ここに限って規制を緩和しようという試みで、その有力候補地の1つ、大阪では、『日本維新の会』がカジノ併設の統合型リゾート(IR)の大阪誘致に積極的です。また、東京都でも、11年に台場地区の開発案を民間から募集。フジテレビは三井不動産や鹿島などと共同で、『東京DAIBA・MICE/IR国際観光戦略総合特区』を提出してます。これもカジノ推進の呼び水となっています」
今年3月には、超党派の国会議員で組織する「国際観光産業振興議員連盟」(通称カジノ議連)が、安倍政権発足後、初の総会を開き、関連法案を議員立法として秋の臨時国会に提出する方針を確認した。
このカジノ議連の最高顧問には、安倍総理も名を連ねているといういわゆる肝いりの組織だ。政治部記者が続ける。
「そもそもカジノ議連は、10年4月に設立総会が開かれ、民主党の『カジノ合法化原案』をもとに法制化を検討。当時も秋の臨時国会提出を目指したものでした。ただ、断念した10年とは、状況が一変しています。まず、メリットが見直され、推進派が発足時の74人から140人と、ほぼ倍増しました」
政界の動向のみならず、これまでカジノ解禁に慎重だった警察サイドも条件付きながら、容認の方針を打ち出したのも、追い風になっているという。
「実は、カジノ議連の総会前日に、カジノ反対の姿勢をかたくななまでに崩さなかった警察サイド、そのトップ組織の警察庁を管轄する国家公安委員会の古屋圭司委員長が、『暴力団排除などの適切な措置が講じられるのであれば、カジノを合法化する特別立法に反対するものではない』と、会見で言明したんです。これによって一気にカジノ解禁の機運が高まりました」(前出・政治部記者)
まさに、アベノミクスならぬ“カジノミクス”が、永田町をにぎわしているのである。