巨額の金が動くパチンコ産業には表と裏があった。暗躍するグループがホールを食い物にするかと思いきや、実は結託しているケースまであり‥‥。「30兆円産業」を謳歌する組織のボスが、高笑いしながら口を開いた。
パチンコ愛好家の多くは、ホール側による出玉操作の存在を疑いながらも、それはごく一部のことであり、自分たちとは無関係だと、パチンコに興じていることだろう。ところが、そんな思いをあざ笑う、不敵な笑い声が聞こえてきた。
「ホールが裏業者と組むなんてのは、何も珍しかないよ。当たり前、どこにだってある話なんだから」
「カバン屋」と呼ばれる、パチンコ裏業者グループのボス・X氏である。カバン屋のグループは日本全国に網の目を張り巡らせたように数多く存在するという。
「カバンに裏基板を入れて持ち歩くから『カバン屋』って言うんだよ。俺たちが通常扱うのは、通称“Bロム”って基板だ」
パチンコ台はどの機種も、背面に収められたチップによって当たり確率などの動作が設定されている。そのチップに内蔵された正規のロム(Aロム)をプログラム変更した、裏ロムと入れ替えた裏モノがまかり通っているのだ。
裏ロムには、BロムとCロムの2種類がある。
「ホールが儲かるよう都合よく設定されたものがBロム、ホールを引っ掛けるように仕組まれたのがCロムってわけだ」
わかりやすく言えば、Bロムはカバン屋とホール側が共謀して仕込まれるが、Cロムはホールの意向ではなく、ホールの敵に当たる「ゴト師」が閉店時間中にホールに忍び込むなどして仕掛けられることで広く知られるようになった。平成の初頭には、ゴト師集団を題材にした長編コミックや映画シリーズもヒットし、誇張はあるだろうが、サーカス団員さながらのアクロバティックな“曲芸”を駆使する派手なゴト師の姿が描かれた。一方でX氏は、それを時代遅れの手口だとせせら笑う。
「ゴト師なんて、あんなのは一昔も二昔も前にはやったやり方だよ。ホールに忍び込んだはいいけど、天井から真っ逆さまにフロアへ落っこちたドジなヤツがいた、なんて笑えない話もあったな。ただCロムといえば、ゴト師の仕業ではなく、パチンコ屋にBロムとして依頼されたカバン屋が裏切って設置していくケースもある。そうした場合、店が潰れるほどは出さないから、店側はたまたま連チャンしてるだけだと思ってるんだろうな」
想定外の裏切りは別として、あらかじめホール側と相互協力で共存共栄を図るカバン屋のリスクは、ゴト師と比べて断然に低い。
「どこの店で打ったって似たり寄ったりの成果じゃ、客としちゃおもしろみに欠けるだろ。ギャンブルなんだからよ。正規の台だとそうなるようにできてるんだけど、ホールとしても“あの店は出る”と客に思わせたいわな。そこでシマ(同じ機種の台が十数台並ぶスペース)ごとに3~4台くらい“当たり台”を仕込むわけだよ」