デビュー以来、怒濤の快進撃を続けてきた藤井聡太七段(17)への注目度が俄然高まっている。きっかけは渡辺明棋聖に挑んだ「ヒューリック杯棋聖戦」で2連勝を果たし、初タイトル獲得に王手をかけたからだ。
五番勝負を終える7月中にあと1勝すれば、屋敷伸之九段が保持する18歳6カ月のタイトル獲得の最年少記録を大きく更新することになるため、3年前の29連勝を彷彿させるフィーバーぶりとなっているのだ。将棋関係者によれば、
「初タイトル獲得直後の対局となった7月1、2日の第61期王位戦七番勝負の第一局では藤井七段が木村一基王位(47)に95手で圧倒。先手の藤井七段が得意としている『角換わり』で積極的な攻めを見せ、木村王位がそれに受けて立つ形でスタートしました。中盤以降で藤井七段が優位に立ち、徐々に一方的な戦局に推移していきます。最後は“千駄ヶ谷の受け師”の異名を持つ木村王位が粘りをみせましたが、ひるむことなく押し切る形となった。会場が藤井七段の地元・愛知だったこともあり終始、泰然としていましたね」
史上最年少のプロ棋士デビューから数々の最年少記録を塗り替えてきた。その強さの秘密は6月28日の棋聖戦にも存分に現れていたという。とりわけ、渡辺も意表を突かれる形となった第2局での四十二手目の「5四金」の指し口について、最年少タイトルホルダーで立会人を務めた屋敷九段も「セオリーを越えた新しい手を指す積極性が素晴らしい」と賞賛の声を惜しまない。
「セオリーではない手に控室でも驚きとどよめきの声が上がりました。駒を獲りにいく手としては強い手ですが、守りが崩れて相手に攻め込まれる恐れがありますので、実践では非常に指しにくいものだったと思います。形に違和感がありますので、よほどの自信がないと自分自身も指しづらくなります。結果的に、勝ちにつながったので大成功ですよ」
この「5四金」は本来、守りを担う「金」が突如、攻撃に転ずるという想定外の一手だったのだ。これには、「魔王」の異名を持つ渡辺も動揺したのか、右手で眼鏡のフレームを触る様子は、指すなりすぐに席を立ったポーカーフェイスの藤井とは実に対照的に映ったものだった。
デビュー直後の29連勝快進撃から3年あまり、その進化はもはや「異次元」レベルと評される。7月7日発売の「週刊アサヒ芸能7月16日号特大号」には、屋敷九段だけでなく“藤井キラー”の異名を持つ大橋貴洸六段や将棋関係者の解説をもとに、藤井の強さの秘密が隠されている、前出の「セオリーを越えた新しい手を指す積極性」を始めとした、「7つのファイル」について詳報している。藤井七段の最年少タイトルがかかった棋聖戦第3局は7月9日。熱戦への期待は高まるばかりだ。