大きな衝撃は待つ間もなく、初脱ぎからやって来る。まさか、うら若き新人女優がトンネルで、橋の下で、ビニールハウスで、奔放なカラミを見せようとは!ベッドシーン事情に詳しい映画ライターの松井修氏に聞く─。
まず松井氏が推したのは、黒木瞳の映画デビュー作「化身」(86年、東映)。
「宝塚の娘役トップスターだった人」が、映画初出演で脱ぎの場面が4回、情交シーンが4回と「大盤ぶるまい」していたことについて、「何が何でも女優として鮮烈な印象を残したい意識の表れでしょう」と評する。
中年の文芸評論家(藤竜也)の不貞相手となり、オンナとしても見違えるような成長を遂げる。そして見せ場となるのが、屋形船での秘め事のシーンだ。
「最初のホテルでは、黒木がウブな女という設定だったため最後までできず、こちらが初貫通となります」 黒木は、船の上で下腹部を口で愛撫され、「そのまま初めて結ばれることに。短いシーンだったが、「女優魂を感じさせる」貴重な情交シーンだったという。バストは小ぶりだが、「肌の美しさはスクリーンに輝きをもたらしました」と称賛する。
本特集で最も古い作品となるのが、大谷直子のデビュー作「肉弾」(68年、ATG)だ。撮影当時、まだ17歳という初々しさで、初脱ぎの舞台となったのは「防空壕」だった。出征を前にした男(寺田農)が、死ぬ前に最後に結ばれたい相手として、もんぺ姿の女学生と知り合う。雨に濡れたまま防空壕の中ですべて脱いで寺田の前へ「今なら撮影が難しい年齢ですが、それゆえに神がかるほどの美しい肉体でした」という。
大谷はその後テレビ・映画で実力派女優として活躍。83年には日活ロマン映画「ダブルベッド」にも主演。その原点となったのが本作であった。
大谷と同じく、ATG作品が出発点となった桃井かおりは、田原総一朗が監督を務めた「あらかじめ失われた恋人たちよ」(71年)で大胆な場面を連発する。
「画面がモノクロで見づらくはありますが、トンネルの中で加納典明と『白黒ショー』をやらされます」
漁民たちの前で、向かい合った姿で熱演。「みごとなプロポーションを見せました」とのことだ。桃井は「トンネルの中」だけでなく「雪の上」でもオープンな肢体をさらした。萩原健一と共演した「青春の蹉跌」(74年、東宝)でのことだ。寒さの中で胸を出した姿でショーケンと絡む姿に、
「大変そうだなと思いました。ただ、作品は神代辰巳監督ゆえ、完成度は高かったですね」
特撮番組「ウルトラマン80」(TBS系)のヒロインを途中降板してまで、石田えりが出演を望んだのが「遠雷」(81年、ATG)である。都心近郊の農村を舞台に、青年(永島敏行)と結婚する娘を石田が演じた。モーテルで初脱ぎして飛び出す真ん丸のバストも「すばらしい」そうだが、「やはり、ビニールハウスでのカラミが秀逸」だと断言。「服を脱いだ姿で横になった石田に永島が覆いかぶさりますが、当時の『11PM』(日本テレビ系)などで紹介され、劇場に直行したくなりました」と振り返る。
石田と同時期に80年代の性のシンボルとして台頭した烏丸せつこは、2作目の「マノン」(81年、東宝東和)が今でもコアな人気を誇っている。橋の下での佐藤浩市との屋外情交だ。「何人もの男たちにのぞかれながらの羞恥プレイでした。そしてラストは、死体となって佐藤に担がれていますが、白いシャツからはだけた右胸がグッときます。映画ポスターも、このシーンを大胆に配置していました」
いずれも昭和のよき遺産であろう─。