「汚染水による影響は福島第一原発港湾内の0・3平方キロ圏内に完全にブロックされています」
東京五輪開催が決まったIOCの最終プレゼン。その後で行われた記者との質疑応答で、安倍晋三総理は汚染水に関する質問によどみなく答えた。
この日本政府の最高責任者の文言が、多くのIOC委員に安心を与え、一気に招致を決定づける一因となった。
ところが、これに困惑しているのが東京電力である。8月下旬に「タンクから漏れた汚染水が港湾外に出ている可能性がある」と発表していた。実際に、多くの新聞にこうした見出しが躍ったことを記憶されている方もいるだろう。
そして、9月9日に行われた東電の会見では、安倍総理の発言と東電の発表の食い違いを質す質問が飛び出した。
すると、東電側は苦しい答えに終始した。
「その時点で、外にタンクから漏れた排水溝を通して海に出た可能性は否定できないというふうに発表させていただきました」
現在も海洋への汚染水漏洩の可能性は否定できないとしつつ、「政府は(モニタリング調査で)海洋への影響は出ていないという主旨で発言されたものだ」と説明したのだ。
安倍総理は「ヘッドラインではなくデータを見て」と言うが、当の東電が「漏れているかも」と言う。IOC委員だけでなく、国民もダマされているということなのか。