最高視聴率42.5%を記録し、刑事ドラマの金字塔となった「太陽にほえろ!」(72~86年、日テレ系)。5代目の新人刑事・ロッキーこと木之元亮(69)が、疾走の日々を振り返る。
──加入は番組開始5年目の77年、まさに国民的人気ドラマだった頃ですね。
木之元 元漁師が一夜にして人生が変わったと思いましたよ。まだ撮影所まで電車で通っていましたが、初回放送の次の日には高校生たちにサインをねだられて。殿下役の小野寺昭さんから「女房の中古のサニークーペを10万円で譲ってやるよ」と言われて、そこから車で通うようになりました。
──番組の人気を象徴するのが、日テレでありながら、金曜だけは巨人主催試合の生中継がなかったことです。
木之元 ところがですよ。僕が入った年に、王貞治選手の756号が出るかということで緊急の生放送になったんです。番組の冒頭に長嶋茂雄監督が出て「番組をご覧の『太陽にほえろ!』ファンの皆様、本日はワンちゃんの大記録がかかっておりまして」とお断りを入れたんですよ。そのことで、さらにすごいドラマだなあと思いました。
──マカロニ(萩原健一)、ジーパン(松田優作)、テキサス(勝野洋)、ボン(宮内淳)と続いた個性的な新人刑事に、ロッキーはまったく別の風を吹き込みました。
木之元 僕のプロフィール写真が岡田晋吉プロデューサーの机の上に置いてあって、そこにたまたま松田優作さんが来たんですよ。それで「こういうヒゲ面の刑事がいても面白いんじゃない」と推してくれたので、決まったと聞きました。
──日本人離れした豪快なヒゲはもともと?
木之元 ヒゲだけじゃなくジーンズの上下も帽子も、全て自前でした。そして撮影が始まったら、まずタイトルバック用にこれでもかと走らされる。全力で走って息が切れて、そこから「はい、これから本番」って。もう、早く言ってよと思いますよ(笑)。
──新人刑事としては異例の、5年2カ月ものレギュラーを務めました。
木之元 僕がいるうちに山下真司、渡辺徹、三田村邦彦、沖雅也、神田正輝さんも入ってきましたね。
──そしてロッキー山脈での壮大な殉職を迎えます。
木之元 殉職シーンの演出は演じている役者の意見が尊重されるんですが、だいたい「撃たれるか、刺されるか」でしょ。だから「ロッキー山脈に行きたい」って言ったんですよ。幸い、番組が10周年ということもあり、飛行機が苦手な露口茂さん以外はそろってカナダに来ていただいて。さらに前後編の2週にわたったのもうれしかったですね。
──ロッキーに続いて、ベテランのゴリさん(竜雷太)もまさかの殉職でした。
木之元 番組そのものが10年やったから終わろうかという話もあったんです。だけど続投ということになり、さすがにゴリさんが「俺は10年やったから、もう殺してくれ」と直訴されたんですよ。
──ロッキーを卒業して、心境の変化はありましたか。
木之元 心境というか、卒業直後に「火曜サスペンス劇場」の一本に出まして。村川透監督のはからいで、劇中でヒゲを剃ることになったんですよ。家に帰ってびっくりしたのが女房で、だって知り合った時からヒゲ面でしたから(笑)。2人の子供も、不思議そうに僕の顔を見ていましたね。
──視聴者だけでなく、家庭内でも豪快なヒゲのイメージだったんですね。