テリー 渡邉さんみたいな天才的な経営者はいいけど普通の人はどうしたらいいんですか。焼肉がいいから「じゃあ、焼肉屋に変えよう」って、できませんよね。
渡邉 この前出版した「コロナの明日へ」という本にも書いたんですけど、今回の川を越えられるかは、その人にしかわからないんですよね。「はい、ここから跳んで」って言った時に、人間って不思議なことに、跳べるかどうかを瞬時に全部計算してるんです。
テリー あぁ、確かに。
渡邉 で、その答えって実は正しいんですよ。だから経営者も、この川が跳べるかどうかは、勘で判断するのがいちばんいいと思います。跳べないと思ったら無理しないことだし、跳べると思ったらチャレンジすればいい。
テリー その本、僕も読みましたけど、この状況で苦しんでる経営者に贈る提言ですよね。
渡邉 僕がいちばん書きたかったのは、先ほども言ったように、とにかく経営は「前提」なんです。だから「コロナがなければ」とか「国がこうしてくれれば」というのは関係ない。
テリー まぁ、コロナも国の対応も、それが前提ですから文句を言っててもしょうがない。それを前提に考えるしかないってことですよね。
渡邉 そうですね。僕が思う経営者って「どういう未来を見れるか」なんですよ。この現実はみんな同じです。でも、そこから「もうダメだ」という未来を見るのか、「最高のチャンスだ」という未来を見るのかで、未来はまったく変わってきます。で、未来を見る力は人それぞれですから。その力が僕は経営力そのものだと思いますね。
テリー だけど、普通は「冗談じゃない!」って言いたくなるじゃないですか。例えばコロナに対する国や東京都の動きにしたって。
渡邉 あ、それは全然ダメですよ。緊急事態宣言ひとつ取っても、なぜ出したかという明確な基準や根拠がないんですから。
テリー 場当たり的ですよね。
渡邉 日本の経済はあれでボロボロになりました。なおかつ、それを補おうと1人10万円ずつ12兆円ものお金をブチ込んだ。僕はあれでこの国は終わったと思ってます。
テリー 東京都も「夜10時以降は酒を提供しちゃいけない」とか、効果があるのかないのか、よくわかんないですよね。
渡邉 本来は「この業種とこの業態、この地域はこういうリスクがあるから、それがなくなるまでこれをやります」と根拠を示すべきですよ。そのうえで「損失分は国や都が保証します、だから命令です」と言えばよかったんです。そこを曖昧にして「みんなでなんとなくやりましょう」というのは、結果的に日本が財政破綻する大きな道筋を作ってしまったと思いますね。
テリー いずれ日本経済が破綻するっていうのは、渡邉さんはコロナの何年も前から言ってましたよね。
渡邉 そうですね。そうならないために13年に国会議員になりましたから。
テリー 任期満了で政界を引退したのは去年の7月ですよね。もしこの状況で、もう1期議員を続けていたら、ワタミはどうなったんですか。
渡邉 潰れてたでしょうね。会社って恐ろしいもので、中に入るといろんなダメなところが見えてくるんですよ。今日も朝から会議だったんですけど、「あ、これ、俺がいなかったら、誰も気づかなかったのか」と思うことがいっぱいあります。だから、どんどんダメな会社になっていったんだなって、まるでドラマを見るようですよ。