殿はきっと日本でいちばん、結婚式のお祝いコメントビデオを頼まれている方ではないでしょうか。
「たけしさん、すいません。以前、たけしさんと一緒に番組をやっていた○○○が、このたび結婚をしたので、お祝いのコメントを頂けないでしょうか?」的なお願いのあと、すぐさまビデオを回され、殿がコメントをする姿を何度も、本当に何度も見てきています。
普通に生きていたら、知人友人の結婚の際、改めてお祝いコメントをビデオでお願いされることなど、あまりないのではないかと。ましてや“よく知らない遠い知人”のためのお祝いコメントビデオ撮影など、ほぼ皆無だと思います。そこへいくと殿は、日本の誰もが顔と名前を認識している、“ザ・有名芸能人”です。そうなると、有名税的にあらゆるところからお祝いのコメントを申し込まれます。
ちなみに殿は当然、ビデオコメントだけでなく、結婚式などのお誘いを受けることも多いのですが、日本一多忙でオフがほとんどないですから、時間的に参加することは不可能なため、そこはやんわりとお断りすることがほとんどです。
が、極まれに出席する時など、殿は必ず、
「結婚式は行ったら行ったでしんどいんだよな。だってスピーチを断ったってよ、行けば必ず『今日はたけしさんが来てます。ひと言、お祝いの言葉をお願いします』なんて絶対になるんだから。
それで俺が普通にコメントしたら『なんだ、たけしは普段はつまんねーな』なんて言われちまうんだぞ。どうしたって商売柄、こっちは少しは笑かさねーといけねーから、いつコメント頼まれてもいいように、式の間中ずーっと、何しゃべろうか考えて、毎回ヘトヘトになるんだよ。だいたい、よく考えたら、なんでご祝儀まで渡してヘトヘトにならなきゃいけねーんだよ!おかしいだろ!!」
と、何度か“芸人が結婚式参加の際に発生する不条理”についてグチッていたことがありました。
確かに、笑いを生業にしていると、結婚式に限らず“あらゆる人が集まる場面”で、どこへ行っても自然と面白発言を求められるケースがあり、好きで選んだ職業とはいえ、なかなかにしんどい案件です。
話を殿のお祝いコメントビデオに戻します。
以前、とある番組で殿と共演をしていた女性タレントさんが結婚をされ、やはり、お祝いコメントビデオを求められた殿は、カメラが回った瞬間、
「おい、○○○、俺との仲を忘れたとは言わせないぞ! 俺を捨てるのか!! お前には毎月30万やってたじゃないか! ちくしょ~。う~(泣きの演技)。俺を普通の漫才師だと思うなよ。こうなったら死んでやる~。あ~~」
と、病的に追いすがる“たちの悪い昔の男”を瞬時に演じ、当然ですが、その場を爆笑させていました。こういったコメントを、いつだって意気揚々と瞬時に見せてくれる殿、最高です。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!