最近注目されている病気に「感覚過敏」がある。人から触られるのが苦手だったり、周囲の音やニオイ、味覚、触覚など外部からの刺激を過剰に感じてしまい、激しい苦痛と不快感を覚える状態を指している。
視覚過敏、聴覚過敏、嗅覚過敏、味覚・食感過敏、触覚過敏の5つがあり、1つの場合もあれば、複数にわたって発症する場合もある。
例えば、化学繊維の服がチクチクして着られない、握手などで人に触れられるのが苦手、天気がよい日は光がまぶしすぎて目や頭が痛くなる、他人の化粧品や柔軟剤のニオイが我慢できず吐き気がする、口に当たるマスクの触り心地が不快‥‥などが挙げられる。
アメリカ精神医学会の診断基準「DSM-5」(精神疾患の診断・統計マニュアル)では、発達障害「自閉症スペクトラム」のひとつとして、感覚過敏の異常が指摘されている。
脳は外部からのさまざまな刺激に対して、生活に支障を来さないようにコントロールしているが、それがうまく機能できなくなってしまうために発症する。やっかいなのは、症状のない他人には理解されにくく、「細かい性格」「我慢ができない人」と誤解されることも多いことだ。
対処法としては「感覚過敏」の原因を物理的に取り除いたり避けることが肝心。例えば、大きな音のする場所は避ける、服のタグは取り除く、聴覚過敏が気になる人は耳栓をする、視覚過敏の人はサングラスをかける、嗅覚過敏の人はマスクを使用して対処する、などだ。この病気は、幼少時から自覚している人が多いが、不安やストレスが引き金となり、大人になって発症することも多い。
仕事にも支障を来すので、視覚過敏なら眼科、嗅覚過敏なら耳鼻科の受診といったように、まずは該当する専門の診療科を受診しよう。そのうえで異常が見られない場合は心療内科の受診が必要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。