今季のペナントも終了し、いよいよ恒例の「ワーストナイン」決定のシーズンがやって来た。楽天の初優勝に、広島の快進撃などの下克上も相次いだが、常連選手の厚い壁が立ちはだかるシーズンとなった。スポーツ紙ではわからない“裏タイトル”の表彰式を開催しようではないか。
世間ではデフレ脱却が叫ばれるが、球界では今季もインフレプレーヤーが続出した。コストパフォーマンスの悪い両リーグのワーストナインを発表しよう。
ワーストナインに並んだ顔ぶれには、はっきりした特徴が見て取れる。1億円以上の高給取りでありながら、打率3割を大幅に切る選手がほとんどなのだ。当然ながら1安打当たりの単価が跳ね上がる結果となった。野球評論家・江本孟紀氏の意見を聞こう。
「年俸というのは実績分と期待料を合わせたものです。高額をもらっている選手ならば、当然ながら期待料も高い。そう考えると、打率2割6分7厘の新井貴や2割1分9厘の畠山は、その期待に応えたとは言いがたい」
野手で極端にコスパが悪いのはDeNAのラミレスと西武の中村剛也の2人。ともに1安打当たりの単価が1000万円を超えてしまったというふがいない成績だ。監督・コーチ歴が豊富な野球評論家・伊原春樹氏もこう語る。
「拙守を理由に7月に登録抹消になってしまったけど、ラミちゃんの守備が悪いのは最初からわかっていたこと。球団は、打撃でカバーしてくれればいいと考えて契約したんでしょうけど、この成績じゃワーストナインに選ばれてもしょうがないかな」
Bクラスチームの選手が多いのはやむをえないだろう。パ・リーグ5位のオリックスからは、後藤光尊、坂口智隆、T─岡田の3人が名を連ねた。いずれも不調や故障で出場試合数が100を切っている面々だ。
「年俸の期待料というのは、選手が試合に出場できるコンディションを提供することを前提に支払われている。故障とはいえ、その義務を怠ったことの責任は大きい。3億円プレーヤーの西武・中村もそうですが、チーム低迷の原因を作った坂口や岡田の非貢献ぶりも責められてしかるべきです」(前出・江本氏)
土壇場でクライマックスシリーズ進出を逃したソフトバンクにいたっては、最多の4人が顔をそろえる。特筆すべきは一塁手のラヘア。メジャーリーグのオールスター戦出場という実績をひっ提げ、昨年末、年俸1億8500万円で2年契約を結んだ。しかし打撃は振るわず、打率はわずかに2割3分。CS出場争いが佳境に入った9月に登録抹消されると、左手甲の故障もあり帰国してしまった。
「ラヘアはカブスに在籍した昨季、シーズン前半は活躍したものの後半は失速。打撃に粗さがあり、日本人投手の変化球に対応できるか不安の声もあったのですが‥‥。資金力のあるソフトバンクは、オールスター出場という実績を評価して高額契約を結んだのでしょうが、結果はご承知のとおり。ペーニャと合わせて、長距離砲と期待された外国人が2人とも機能しなかったのですから、CS出場を逃すのも当然でしょうね」(前出・伊原氏)
投手陣に目を向けると、昨年のリーグ優勝から一転最下位に沈んだ日本ハムのエース・武田勝の不調が目についた。投手出身の評論家・野田浩司氏が解説する。
「ケガの影響もありましたが、武田が8勝止まりだったのは、最下位低迷の大きな原因ですね。日本ハムは武田と吉川光生の2人が14勝くらいしないと厳しいチーム。この2人の活躍が見られなかったのはチームとしても痛かった」
救援投手では、ソフトバンクのファルケンボーグがわずか10セーブに終わった。1セーブ当たりの単価は破格の2000万円。先発投手の勝ち星を消した回数も2位タイとあっては、2億円投手の名が泣くというものだ。ソフトバンクOBでもある評論家・橋本清氏も苦言を呈す。
「今年のファルケンボーグは、ボールがあっちに行ったりこっちに行ったりで、救援投手の仕事がまったくできていなかった。日本の野球に慣れてきて、なめてた部分もあったのでしょう」
セ・リーグでは、ヤクルトのエース・石川雅規が2年連続の表彰台に。成績もわずか6勝に終わってしまっただけに、1勝当たりの単価は3333万円。今季はビッグイニングを作るケースも多かった。
「相性の悪い審判にコースを狙った球をボールと判定されると、さらに際どいコースを狙って甘くなるという悪循環が目立った。球威があれば多少甘くても抑えられるんですが」(前出・伊原氏)
今季のヤクルトは、ほとんど見せ場もなく最下位。エースの不調が、チームの成績に直結してしまったと言えるだろう。