50歳を過ぎれば、とかくユルくなるのは涙腺と肛門である。飲み過ぎた翌日、放屁のつもりでつい力んで、思わず便を漏らした経験はないだろうか。シモのトラブルは人に相談もできず、悩みを抱えたままでいることも多い。しかし、放っておけば生命に関わるトラブルにもつながるという。
創設9年目にリーグ初優勝を成し遂げた楽天。この栄光は前監督・野村克也氏(78)の功績が大きい。彼が監督時代に起こした“黄金伝説”を、あるスポーツ誌記者が振り返る。
「07年5月23日の対ヤクルト戦、同点で迎えた10回裏に、楽天がサヨナラ勝ちをしました。その瞬間、喜びと同時に野村さんが便も爆発させてしまったのです」
野村氏はユニホームのズボンの後ろを黄色く染めながら、試合後、
「ワシも年やの~。体がいうことをきかなくなったわ」
と、照れ笑いをした。当時、野村氏は72歳だが、なぜ年を取ると便漏れを起こすのか──西新井大腸肛門科の医師・久保田至理事長が、そのメカニズムを解説する。
「肛門を動かす筋肉は内括約筋と外括約筋の2つがあります。内側の筋肉は付随筋なので自分の意思で締められません。便を排泄する時は、内括約筋も外括約筋も弛緩しないとできません。便が漏れるのは、これらの内括約筋と外括約筋の協調運動がうまくいかないのに起因すると考えられます」
便漏れは筋力の衰える高齢者だけに起こりうるトラブルではないという。
「若い人から80代まで、広い年代で悩みを抱えている人がいます。括約筋を緩めないと大便は排泄できませんが、若年層でも神経の問題で筋肉にうまく伝達できない人もいます。誰でも年を取れば我慢できずに漏れてしまう。私も飲み過ぎてなる時がありますよ(笑)」(前出・久保田理事長)
月に1回くらいの便漏れは心配しなくてもいいと言われているが、頻度が多い時には、医者に行くことが重要だという。現在では、バイオフィードバック療法という、外括約筋を鍛える方法で便漏れをなるべくなくす方法があるという。
「本当に(肛門が)締められているかどうかは、診察しないとわかりません。自分では締まっていると思っていても締まっていない人がいますので、自己判断をしないことです。バイオフィードバック療法は、肛門に風船のようなものを入れて、力が入るとランプなどが点灯する装置です。力を緩めるとランプが消える。自宅ででき、肛門の締め方を訓練します」(前出・久保田理事長)
しかし、肛門にはまだまだトラブルが潜んでいた。