「奇跡の1枚」と呼ばれる写真によって運命が変わり、早7年余り──。地方のアイドルグループのメンバーに過ぎなかった少女は今、CM、映画、ドラマと出ずっぱりのシンデレラ女優に上り詰めたのである。
「2021年お正月三が日のテレビCM動向CM出演本数」(ビデオリサーチ調べ)で堂々の1位に輝いたのは、267本を記録した橋本環奈(22)だった。「住宅情報館」や「NTTドコモ」「洋服の青山」などなど、起用社数も20社となり、こちらもトップである。
確かに橋本は昨年、ヒロインを務めた「今日から俺は!!劇場版」(東宝)、「弱虫ペダル」(松竹)をはじめ4本の映画に出演し、今年も「かぐや様は告らせたい2~天才たちの恋愛頭脳戦~」(東宝)の公開が控えるなど絶好調。いや、それを言ったら、17年の高校卒業後に地元・福岡から上京して以降、たちまちテレビ、ウェブと媒体を問わず、ドラマ、バラエティー番組にも引っ張りだこという状態のままなのだ。
そもそもブレイク前夜の橋本は、地方アイドルグループの一員として舞台で歌い踊る活動をしていた。アイドルライターの林憂歌氏によれば、まだ注目もされず無名も同然だった。
「彼女が小学校5年生時の09年から所属していた『Rev. from DVL』というグループは、同じ福岡拠点のグループ『LinQ』と比較しても知名度が低かった。必然的に橋本の名前も、地方アイドルに詳しいファンやライターの耳にすらあまり届いていませんでした」
転機は13年、彼女がステージ上で目を輝かせ、はつらつと笑顔で踊る写真がネット上で拡散された。すると、またたく間にその美少女ぶりが注目され、当時の所属事務所に取材やCMのオファーが殺到。多くの視線を集めた写真は「奇跡の1枚」ともてはやされることに。
「例の写真で話題となるや、現在の所属事務所と業務提携しているため、速攻で売り出すための戦略だったように思われるかもしれません。でも、写真自体は熱心なファンが流したものです。17歳時の16年には、すぐさま『セーラー服と機関銃-卒業-』(KADOKAWA)の主演にも抜擢され、トントン拍子にステップアップしていきました」(林氏)
きっかけは、たった1枚の写真が偶然にして作り上げたムーブメントだったかもしれない。しかし、実は芸能界の重鎮たちからも秘かに注目されており、売り出し方については徹底した水面下の戦略が練られていた。
芸能プロ幹部が極秘の売り出し作戦を明かす。
「彼女を地方アイドルから引き揚げたのは、複数の芸能プロに影響力がある有力者が中心となり、ドラマ、バラエティー番組に多くの所属女優、タレントを送り込む大手事務所も協力してのプロジェクトだといいます。多大なバックアップを受けた上で、19年より専属契約となった現在の事務所に所属している。目標は女優として大成させることでした。初主演の『セーラー服と機関銃』主演の際から『元アイドル』という肩書を許さず『女優』と表記するよう、所属事務所から強くメディアに要望が出されていました」
それが功を奏して昨年1月、橋本は1年を通じて最も活躍した将来有望な新人俳優に贈られる「2020年エランドール賞新人賞」を受賞している。