「昔、博品館でやった『THE MANZAI』の映像が、なんかYouTubeにあんだって? お前、見たことある?」
先日、テレビ局のトイレから出てきた殿から、唐突にこう聞かれました。で、殿が言う「博品館での漫才映像」とは、たけしファンの間ではすこぶる有名で、わたくしも何度もYouTubeで見ていたため即座に「もちろん、あります!ブームになった年の12月30日に博品館から生放送したやつですよね。ツービートは途中から新ネタをやり出して、とんでもなくウケた回です。それ、『ツービート伝説の博品館』って言って、有名なやつですよ」とやや興奮ぎみにお答えすると、殿は一気に記憶がフラッシュバックしたようで、
「そうだよ! 生で年の瀬にやったんだよ。あれよ、ギリギリまでネタ、何やるか悩んでてよ。新ネタを出たとこ勝負でかけたら、それがえらいウケたんだよ」
と、回想したのでした。ちなみに、そのネタの何がそれほどまでに伝説なのか? 説明します。
時は1980年、フジテレビが仕掛けた特番によるネタ番組「THE MANZAI(80年4月~82年6月にかけて全部で11回放送)」がきっかけとなり、日本中に空前の漫才ブームが巻き起こります。当然、出演していた漫才師たちはアイドル的人気の超売れっ子となり、あらゆるメディアに出まくるようになりました。ちなみに、ここで話題にしている「第5回」の視聴率はなんと32.6%!
そんな番組を殿は以前、こう振り返っていました。
「放送の次の日なんかはどこ行っても『誰がいちばんウケた』とか『誰がいちばんつまらなかった』とか、必ず言われたからな。だから、ネタがいまいちウケなかった時の次の日なんかはもう地獄でよ。『昨日のツービートはつまらなかったね』なんてはっきり言われるんだから」
笑いの量とその結果がはっきりとさらされた、過酷な番組「THE MANZAI」。で、伝説の博品館ですが、売れっ子となったB&B、紳助竜介、ザ・ぼんち、ツービートらのスケジュールがまったく取れず、“もう各コンビ、12月30日の夜しか空いていない。ならば生でやってしまおう”となり、一発勝負の生放送となったのです。
本番、出演する各コンビは忙しすぎて新ネタを作れず、皆が“ありネタ”を披露する中、この日、ツービートだけが途中から一か八かの新ネタをかけ、それが異常なまでの大爆笑となり、はっきりと“勝負に勝った”伝説の日となったのでした。
当日の現場にいた高田文夫先生は「本当に一発勝負だったんだよ。そこでものすごい漫才を見せたのが、たけちゃんのツービート」と、ラジオで語っていました。
で、トイレから楽屋へ戻った殿は、
「今見ても結構面白い? あっそう。じゃー、ちょっとYouTubeで見直してみっかな」
と、宣言していました。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!