10年程前に殿が書いた芝居用の戯曲「路地裏のゲロ」。現在は紙でのデータしか残っていない、その台本が今、訳あってわたくしの元にあり、そのことを殿にお伝えすると、殿は“そうだ! 忘れてた! オイラ、前に芝居の台本を書いたんだ!”といったリアクションのあと、いたく関心を示したのです。そして「それ、読み直して書き足したいから、パソコンに打ち直してデジタルのデータにしてくれよ」的指示があったことを前回で書きましたが、この「路地裏のゲロ」をめぐるやり取りはまだまだ続いたのです。
殿の指示どおり「路地裏のゲロ」を書き起こし、フラッシュメモリに入れて、1月30日(土)に殿に渡すと、
「おう、サンキューな。えーっと、明日は日曜だから、○○があるからできないか? うん。月曜はあれか? ○○があるからダメか‥‥。よし、じゃー火曜からちょっと(読み直して書き足す作業を)やってみっか!」
と、はっきりと“修正作業計画”の予定を口にしたのです。
で、データを殿に渡した際、わたくしが「殿、もしよろしければ、ちゃんと稽古なんかして、どこかでこれをやりたいと思っているのですが?」と、少し前からぼんやりと考えていた構想を伝えて、お願いすると殿は、
「おう、いいぞ。やれよ」
と、あっさりと承認。
で、1週間後の2月6日、殿にお会いすると、
「おい、北郷。これ」
と、先日渡したフラッシュメモリとは違う、新品のフラッシュメモリを手渡してきたのです。
どうやら殿は、フラッシュメモリを「1回こっきりの使い捨て」だと思ってるようなのです。それはさておき、「路地裏のゲロ」です。
フラッシュメモリを渡してきた殿は、
「しかし、今読んでもくだらねーな。夜中に読んでて笑っちまったよ」
と、まずはうれしそうに自身が書いた台本の感想を述べると、
「だけど、あれだな。出てくるタレントの名前がよ、今読むとちょっと古いヤツもいるから、その辺はちょっと変えてやったほうがいいな(芝居の中でタレントをいじるくだりがあるため)。あと、○○○のくだりは書き足しておいたからよ」
と、実際に芝居でやる時のアドバイス及び修正箇所について、ていねいに説明してくれたのです。そして、
「これよ、まだまだ足して笑いに持っていけるから、ジャンジャン足しちゃっていいぞ。あと本番はよ、ウケてるところはアクセル踏んで、アドリブなんかも入れてやっちゃえよ」
と、実に殿らしい“何をやるにしてもウケてこそ”なアドバイスをくれたのでした。
ってことで、コロナ禍でもあり、まだ何もかも未定ではありますが、ビートたけし作「路地裏のゲロ」。演劇といった形で決行いたします。その際は、何卒よろしくお願いいたします。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!