人気漫画家・やしろあずき氏が1月下旬に「眼科行ってきた結果、網膜裂孔でした」とつぶやいて「網膜裂孔」がネット上でトレンド入りしたのは記憶に新しい。この聞きなれない眼の病気「網膜裂孔」とは何なのだろうか。
網膜は眼の中にある薄い膜で、カメラに例えるとフィルムにあたる大事な部分。光を感知して脳に情報を伝える神経網膜と、その外側にある網膜色素上皮から構成される。何らかの原因により、網膜に穴があくことがあるが、これを「網膜裂孔」という。放置すれば、神経網膜が眼底から剥がれてしまう「網膜剥離」になる危険もある。
原因は、老化や網膜の萎縮、目の外傷だ。特に老化の場合は、硝子体の液状化が関わっている。硝子体はゼリー状の組織だが、加齢とともに体積が縮小し、液化部が増えて網膜から分離する。それ自体は問題ないが、分離する際に網膜が引っ張られて裂孔を生じ、そこから液化硝子体が流出することで、網膜剥離が発症する。
「網膜裂孔」も「網膜剥離」も、多くは無症状で気づきにくいが、前兆として「飛蚊症(ひぶんしょう)」を自覚することがある。これは、晴れた日の空や白い壁を見た時に、ゴミや虫のようなものが飛んで見える。ただし、「飛蚊症」は近視や加齢によっても起こるため、見分け方は眼底検査で判断する必要がある。
ほかにも、視界の中心や端にチカチカする光が見える「光視症」や、カーテンがかかっているように視野の一部が見えなくなる「視野欠損」を発症する場合もある。
予防は、裂孔や剥離が進行する前兆段階での発見が重要だ。治療は、裂孔、剥離部分の周辺にレーザーを照射し、固める手術。病状にもよるが、数分程度で済む場合が多い。眼の中で光がチカチカするなどの違和感を覚えたら、早めに眼科を受診しよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。