怒濤のごとく続いたGI戦も今週で一段落。3週後に行われる宝塚記念をもって前半戦の幕となるが、休む間もなかった「東京5週連続GI開催」の最後を飾るのが安田記念である。
3歳から古馬まで、どの世代も参戦してくるため、顔ぶれは多彩。各世代のマイル自慢が一堂に会する見応え満点の一戦だが、人気、有力どころで簡単に決着するかといえば、そうは問屋が卸さない。
03年に馬単が導入されて以降、これまでの18年間、馬単での万馬券は11回(馬連は7回)を数える。この間、1番人気馬は4勝(2着2回)、2番人気馬は3勝(2着1回)。1、2番人気馬を合わせて半分にも満たない7勝とあっては、まともに収まるとみるのは筋違いになりかねない。
とはいえ、今年はマイル自慢のGI勝ち馬が勢ぞろい。インディチャンプ、グランアレグリア、サリオス、ダノンプレミアム、ラウダシオン、そして3歳馬のシュネルマイスターだ。
どの馬もマイル戦をめっぽう得意としており、しかも強い。ならば伏兵がつけいるスキは狭く、こうした有力勢同士の争いとなる公算が極めて強いだろう。
ただ、馬齢別データを見ると、各世代がまんべんなく連に絡んでいるものの、6歳以上の古豪の頑張りが目立つ特徴もある。
過去18年間で6歳牡馬が8勝(2着2回)と勝ち星においては一番。当然、生きのいい4、5歳馬がそれに続くが、7歳馬も1勝(2着3回)の実績があり、いかに古豪が善戦しているかがわかる。
あと、挑んでくる頭数が少ないとはいえ、3歳馬は要注意だ。というより、勝ち負けする可能性は極めて濃くなると言っていい。
いい例が11年のリアルインパクトだ。久々の3歳馬の挑戦に加えて、この時期、古馬との肉体的な面での比較において未熟なだけに、まだ通用しないとみられていた。
それもそのはず、この時の1番人気は前走のヴィクトリアMでブエナビスタを破ったアパパネ、2番人気は前年のマイルCSで2着したダノンヨーヨーで、9番人気も頷けるところだった。が、いざフタを開けてみると、そうした低評価をものともせず、勝ってしまったのだ。
いくら3歳で未完成とはいえ、一つのカテゴリーで3歳のトップクラスに立つような力量の持ち主は、古馬相手でも通用してしまうという好例だ。
もちろん、斤量の差も大きい。古馬の58キロ(牝馬56キロ)に対して、3歳馬は54キロでの出走。その強みが生きるというわけだ。今年はNHKマイルCを制した3歳のトップマイラー、シュネルマイスターが挑んでくるため、注目しないわけにはいかないだろう。
古馬の地力がモノを言うか、次世代のトップ候補が斤量の有利さを生かしきるかは微妙で悩ましいところだが、当方としては古馬に一日の長あり、とみた。
ただ、いくら穴党とはいえ、今回の顔ぶれを見ると、やはりグランアレグリアを中心視せざるをえない。前走のヴィクトリアMは強いの一語。休み明けを一度使われての変わり身を存分に見せてくれた。ここは今季3戦目で前走からの間隔は短いが、中間も順調そのもの。というか、雰囲気はさらによくなり、すばらしい気配を漂わせている。
昨年の同舞台でアーモンドアイをまったく寄せつけぬ完勝劇を演じた馬。前走より1キロ重い56キロでの競馬になるが、少なくとも連対を外すことはないだろう。
穴はギベオンだ。マイル戦は18年のNHKマイルC2着を含む3戦のみ。実績的に見劣るが、ここにきての充実ぶりには目をみはらされる。左回りはスムーズで、母はGI2勝馬。地力を秘めており、アッと言わせるシーンがあっていい。