2歳新馬戦は先週から始まっているが、今週から札幌が開幕し、夏のローカル競馬がスタートを切る。
上半期の競馬は余すところ、あと3週。息つく間もなく競馬は続いているが、なんとなくホッとする一時でもある。そんな週に東京のメインで行われるのがGIIIエプソムカップ。芝1800メートルの別定戦だ。
一線級の顔は見られないものの、そう荒れることはなく、順当に収まる傾向にある。馬単導入後の過去18年間、その馬単による万馬券は4回(馬連ではわずか1回)。この間、1番人気馬は5勝(2着4回)、2番人気馬は4勝(2着3回)。ただ、1、2番人気馬によるワンツー決着は3回のみ。上位人気馬同士で決まるかというと、必ずしもそうではないが、穏やかで「穴党向きの競馬」とは必ずしも言えそうもない。
また、4歳馬がいよいよ本格化、充実ぶりを見せる時期で、6歳以上の古豪はお役御免、世代交代を迎えたことを知るべきだ。というのも、過去18年で7歳馬以上が連に絡んだことはない。とにかく4歳勢が圧倒的に強く、11勝(2着8回)をあげている(うち牝馬が1勝、2着1回)。これに続くのが5歳馬の5勝(2着2回)。つまり6歳馬(2勝、2着4回)以上は、人気になっても疑ってかかるべきだろう。
では、今年の顔ぶれを見てみよう。
これぞ、と評価していい馬は少ないが、個性派ぞろいで多彩だ。芝重賞で連対実績があるのはアトミックフォース、アルジャンナ、ヴェロックス、サトノフラッグ、セダブリランテス、ニシノデイジー、マイラプソディの7頭。これら有力、人気どころはチャンスがあっていい。
ただ、決定打に欠く馬ばかりでもある。しかも各馬の力にそう大きな開きがあるとは思えず、だからこそ、馬券的にはおもしろい重賞と言えるだろう。
悩むところだが、最も期待を寄せてみたいのは、ミラアイトーン。
デビューして3年ほどは短い距離で勝ち星を重ね、スプリンターのイメージが強かった。しかし、関東に移籍した6歳からマイル、1800メートルに距離を延ばして成績がアップしてきた珍しいタイプの馬だ。
使われるたびに体質がたくましくなっていることも強調できる。前走の谷川岳Sは4カ月ぶりの実戦。まだ余裕残しの状態で、見せ場たっぷりの3着だった。
血統的には早熟とも思えるが、戦績を見ると「晩成型の馬」と言ってもよく、ここにきての充実ぶりは目覚ましいものがある。
一度使われたことで、中間の良化ぶりは著しく、稽古の動きに迫力が出てきている。また、550キロ以上の巨漢だけに、広い東京コースは歓迎でもある。
菊沢調教師も期待のほどをこう口にする。
「いい雰囲気にある。状態のよさを生かして頑張ってほしい。速い流れになるマイル戦より、この馬にとっては1800メートルのほうが競馬はしやすい」
現に芝1800メートルは〈1 1 0 0〉と好成績。今回は走れる条件がそろっているとみていいだろう。
一族にマイニング(GIヴォスバーグS)、ジルザル(GI2勝、欧州王者)、ポッセ(GIサセックスS)など活躍馬が多くいる良血で、ここでも十分やれていい馬。
道悪はどうかだが、稍重までなら十分勝ち負けになっていい。ここは初重賞制覇のチャンスとみた。