12月8日、東京・国立競技場を舞台に、「京都サンガF.C.対徳島ヴォルティス」のJ1昇格プレーオフ決勝が開催される。昨年から始まった「残り1枠を争う」プレーオフ制度について、スポーツ紙のサッカー担当記者が解説する。
「J2から3チームがJ1に昇格できる中で、J2の中位争いにも目を向けて活性化させるために導入しました。年間成績上位2チームは自動昇格で、3位から6位のチームはプレーオフにまわります。試合はトーナメント方式で争われ、勝ち残ったチームがJ1昇格。昨年はリーグ6位だった大分トリニータが“下剋上”で勝ち抜き、話題になりました」
1日の準決勝では、リーグ3位の京都と、4位の徳島が順当に駒を進めたため、大番狂わせは起きなかったが、実力伯仲の好カードといえるだろう。決勝に進んだ両チームについて、ベテランのサッカージャーナリストがこう語る。
「京都は10年南アフリカW杯で、岡田武史監督(57)の名参謀としてコーチをしていた、大木武監督(52)が3年前に就任。兄貴肌タイプで選手が親しみやすい監督なので、若い選手が多い京都に上手くマッチしました。『サッカーはエンターテインメント』という哲学のもと、攻撃的なパスサッカーを主体として、『1対0』より『4対3』で勝つのを美徳とするような、見ている人を楽しませるサッカーを展開します」
一方の徳島は、四国初のJ1昇格という悲願達成だけではなく、リベンジに燃えている。プレーオフ制度が導入される11年シーズン。プロ入り前から天才と賞賛されながらも、セレッソ大阪で才能を埋もれさせていた柿谷曜一朗(23)を前年に期限付き移籍で獲得。見事に“再生”させて、柿谷を中心に快進撃を続けていたが、残り2試合で連敗してシーズン4位。J1昇格はならなかったのだ。
「12年シーズンから、経験豊富な小林伸二監督(53)を招聘。過去にセレッソ大阪やモンテディオ山形で指揮をとり、資金力不足で戦力が揃わないチームを、まず守備力を高めて、対戦相手を徹底的に分析し、『負けない』チームを作って結果を出してきました。
徳島では、1年目はエースの柿谷が移籍して、ケガ人にも悩み15位でしたが、今年は12試合連続負けなしを記録するなど、相手にとって戦いにくいチームに変貌し、プレーオフに進出しました」(前出・サッカージャーナリスト)
今シーズンの直接対決は、徳島が1勝1分けで勝ち越したが、試合内容は拮抗していた。決勝でも接戦が予想される中、勝敗の鍵を握る選手を前出のスポーツ紙の記者が挙げる。
「京都のキーマンは、GKのオ スンフン(25)。プレーオフ準決勝では、決定的なピンチを鋭い反応で何度も防ぎ、MVP級の活躍でした。昨年まで3シーズン徳島に所属していたので、相手選手の特徴をわかっているのも強み。それだけに徳島は、チーム得点王のFW津田知宏(27)への期待が大きい。またゴール後のパフォーマンスも注目されています。東京五輪招致が決まった時には、ゴールを決めた後に滝川クリステルの『お・も・て・な・し』パフォーマンスでスタジアムを盛り上げました。ファンからは、昇格を決めた時には何をやってくれるのか、そこにも期待が集まっています」
京都の4年ぶりJ1昇格か、徳島の初昇格なるか。前出のサッカージャーナリストは決勝の行方をこう読む。
「1対0で徳島ヴォルティスの勝利です。準決勝を観る限り、京都は得意の攻撃力は影をひそめ、特に後半は防戦一方でした。決勝までに修正できなければ、徳島のカウンターで点を取られる可能性が高いでしょう」
一発勝負の天国と地獄。勝利の女神はどちらに微笑むのか。