今週は中山で「朝日杯FS」が行われる。2歳王者決定戦とはいえ、登録馬の中で重賞を制しているのは牝馬ベルカントただ1頭。はたして牡馬を蹴散らし、武豊騎手の「JRAGI完全制覇」達成なるか、にも注目だ。
歴史を誇る朝日杯FS(旧称・朝日杯2歳S)は、来年から舞台を阪神に移して行われる。枠順の有利、不利が歴然としているおむすび形のトリッキーなコースでGI戦を実施し続けるのは問題あり、としての変更だ。歴史を曲げるのか、と異議を唱える向きも多いが、ここではその是非を問うことはよそう。
とにもかくにも中山のマイル戦で行われる最後の2歳牡(牝)馬総決算。フルゲート(16頭)必至で、熱のこもった迫力ある競馬が繰り広げられることだろう。
不公平なコースとは言うが、02年に馬単馬券が発売されるようになって、その馬単で万馬券が飛び出たのは、わずか3回(馬連は皆無)。比較的堅く収まっていることから見て、能力ある馬は少々の不利は、はね返してしまうといったことなのだろう。
中山が舞台だったからだろうが、西高東低の構図が長く続いていながら関東馬が善戦しているのも、このGIの特徴だ。一昨年アルフレード、昨年ロゴタイプと関東馬が連覇中で、過去10年では4勝、2着5回と強いはずの関西馬と互角に渡り合っている。
今回もショウナンアチーヴ、ショウナンワダチ、そして新たにM・デムーロ騎手とコンビを組むマイネルディアベルといった関東勢には要注意だ。
しかし、押し気味の関西勢に真っ向勝負ができるのは、地方・川崎競馬から参戦する異色の存在、プレイアンドリアルをおいて他にはあるまい。当方としてもこの馬をイチオシしたい。
中央初見参となった前走の東スポ杯2歳Sからしてすごかった。芝のスピード決着ほか、何もかも初経験でありながら、イスラボニータのインからの急襲にクビ差屈するあわやの2着。
手綱を取った温厚な柴田大騎手が怒気をあらわにしたほど悔しがり、オーナーである“ラフィアン”の総帥・岡田繁幸氏が、「厳しい戦いは覚悟していた。でも勝ちに行ったんだ‥‥」と、肩を落としたほど。ハナから負けることなど考えていなかったのだから恐れ入る。それほどまでの素質の持ち主で期待馬なのだ。
なるほど、東スポ杯のパドックでは馬体が図抜けてよく見えたし、勝ったイスラボニータに騎乗していた蛯名騎手も「うまくインをすくえたが、あれ(プレイアンドリアル)は、ただ者ではない」と、高い評価を与えている。
好位で立ち回れる優れたスピードがあり、それでいて、しまいもしっかりしている馬という印象だが、ならば小回りの中山に舞台が移るのは歓迎だろう。
前走後はビッグレッドファーム鉾田でじっくりと調整。1週前の追い切りは全長500メートルの坂路を5回登坂。うち3回を併せ馬で目いっぱい追われ、急勾配でラスト1ハロン15秒を切る馬がほぼ皆無の中、3回とも14秒台の時計をはじき出して調子のよさを誇示してみせた。
ならば、好勝負間違いなしだ。岡田オーナーによると距離延びていいタイプだそうだが、デュランダル(マイルCS2連覇、スプリンターズS)×ティンバーカントリー(8.5ハロン~9.5ハロンのGIを3勝)×ダンジグというスピード色濃い血の配合。マイル戦はむしろいいはずである。
さらに言えば、女傑ヒシアマゾン(エリザベス女王杯)、アドマイヤムーン(ドバイデューティーフリー、JCなどGI3勝)が一族にいる良血。大いに期待したい。
連下は当然、有力どころということになるが、500万条件馬が3~4頭出走できる。この幸運を射止める中にモーリスがいたならズバリ買いだ。
前走は出遅れが災いして6着に敗れたが、体調が良化した今回は身上の破壊力を十分に発揮してくれよう。メジロドーベル(GI5勝)など活躍馬が近親、一族に多くいる良血。“一発”があっていい。
◆アサヒ芸能12/10発売(12/19号)より