芸能

“日本のリバプール”博多スーパースター列伝<第2回>チューリップ(2)

20140116m

 73年に「コーヒーショップで」でデビューしたあべ静江は、山口百恵や桜田淳子、アグネス・チャンと同年の新人賞を争った。百恵がホリプロ、淳子がサンミュージック、アグネスが渡辺プロと“王道”であるのに対し、あべは「シンコーミュージック」という音楽系の事務所に籍を置く。

「私自身が『ザ・芸能界』というムードが苦手で、いくつかお話をいただいた中から、ここが一番、しっくりくると思いました」

 あべより1年早い72年にチューリップがデビューし、74年には甲斐バンドが世に出た。美人アイドルが男ばかりのバンドに囲まれた形だが、息苦しさはなかったと言う。むしろ「家族」のように過ごしていた。

「例えば大阪の仕事が同じ日にあったら、同じロイヤルホテルに泊まらされるんです。その日の仕事が終わったら『ただいま』と帰ってくるような感じでした」

 さらにオフの海外旅行も定期的に事務所単位でという豪胆さだった。多忙な芸能界にあってもオフをきちんと与え、また所属タレントが全員一緒なら事務所の目が届くという利点もあったようだ。

「ロス、ロンドン、パリ、エジプトと行きましたね。同じ旅をするとわかるんですが、女の私よりもチューリップのほうがよっぽど繊細。特に財津和夫は、顔を洗うのも歯を磨くのもミネラルウォーターのエビアンを使っていました」

 あまりにバンドとの距離が近すぎて、一切、恋愛の対象にはならなかった。ただ、思いがけない形で「見守られている」ことを実感する。それはあべが失恋をした直後のことだった。

「財津さんが私のマンションに来たんですよ。まだ私はさめざめと泣いている状態で、失礼な人ねと思ったけど‥‥」

 財津はぶっきらぼうに「お腹すいた」と言う。あべが冷蔵庫からあり合わせの食材で料理を作ると、財津は不遜にも「イヤだ」とゴネる。そして──、

「しーちゃん、泣いているのはいいけど、3日間だけ許す。でも、それ以上になったら好かんたいね」

 その言葉にあべは、ハッと目が覚める自分を感じた。恋人との別離から立ち直れたのは、財津の一言にほかならなかったのだ。

 こうした家族的な仲だけでなく、アーティストとしての財津にも多くの曲を提供してもらっている。特に「私は小鳥」(75年9月)は名曲の誉れ高い。

「もともとチューリップがライブで歌っていましたが、この曲は私のほうが合うんじゃないかと思いまして。それで財津さんにOKをもらって、レコーディングではチューリップがバックの演奏もやってくれたんです」

 エンディングのコーラスの部分は、ギターとユニゾンで高いキーになるのだが、ギタリストの安部俊幸が予定より1小節多く弾いてしまった。そのため、息継ぎのタイミングが大変だったとあべは苦笑する。

 もともとはチューリップのオリジナルでありながら、あべに書き下ろしたと財津が混同したのは、それだけ完成度の高いカバーになった証拠だ。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , , , , , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
【高校野球】全国制覇直後に解任された習志野高校監督の「口の悪さ」/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
3
エスコンフィールドに「駐車場確保が無理すぎる」新たな問題発覚!試合以外のイベントでも恨み節
4
「子供じゃないんだから」佐々木朗希が米マスコミに叩かれ始めた「温室育ち」のツケ
5
ミャンマー震源から1000キロのバンコクで「高層ビル倒壊」どのタワマンが崩れるかは運次第という「長周期地震動」