生え抜きの巨人の選手であり、世界記録となる868本塁打を放ち、栄えある「V9時代」を支えた功労者の王貞治氏が、1994年10月12日、福岡ダイエーホークスの監督に就任との報には驚かされたものだ。
95年から3年連続Bクラス、しかしながら98年に3位、99年にはリーグ優勝を果たし、故・星野仙一監督率いる中日ドラゴンズ相手に日本シリーズを制し、巨人の監督時代から通算して初めて日本一の監督となった。
巨人、埼玉西武ライオンズなど数多くの球団でコーチを務めた橋上秀樹氏のYouTubeチャンネル〈橋上秀樹アナライズTV〉に、西武、巨人で活躍した元プロ野球選手の大久保博元氏が出演し、王監督の「寛大エピソード」を明かした。
同チャンネルの12月19日付け投稿回がその動画だが、王氏にとってホークス監督の最終年にあたり、かつ大久保氏が西武でコーチを務めた2008年を振り返っている。
プロ初登板で無四球完封勝利を記録するなど、この年、ルーキーでホークスに入団した大場翔太投手が絶好調であったと回顧する大久保氏。大場投手が先発を務める福岡ドームでの「ホークス対西武」戦のとある試合前、王監督に大場投手の攻略法を単刀直入に訊ねたという大久保氏。
すると王監督は「ピッチャーを前に行かしてな(打席に近寄らせ)、それを右バッターならレフトへポール際にホームラン、左バッターならライトのポール際にホームランを打つ、そういう練習をやるんだ!やってごらんなさい!」と、答えたというのだ。結果は大場投手を打ち崩し、練習の成果が出たことを明かした大久保氏。
王監督の器の大きさには頭が下がる思いだが、「敵チームの将」に訊くほうも訊くほう…と驚いてしまう。とはいえ、そんな大久保氏の率直さに王監督が報いた形であろうか。見ごたえのある回だった。
(ユーチューブライター・所ひで)