「巨人V9」の元年は1965年だ。以来9シーズンの偉業達成には、現役時代に「打撃の神様」と謳われた川上哲治監督、ミスターこと長嶋茂雄、本塁打王を獲ること15度の王貞治の功績が大きいのは言をまたない。
だが、この定説に異を唱える人物がいた。
その時代、長嶋、王とともにクリーンナップを任された末次利光氏である。11月18日、巨人の新打撃チーフコーチ・大久保博元氏のYouTubeチャンネル〈デーブ大久保チャンネル〉で、その末次氏が「もう1人の立役者」について語ったのだ。
末次氏が中央大学を経て巨人入りしたのは65年。長らく近鉄で活躍した関根潤三の巨人移籍と同じ年であり、末次氏は関根の代走が初出場という奇縁もあった。
この年、もう1人、球界のレジェンドが巨人に移籍している。国鉄時代、最多勝利3度、最優秀防御率3度、最多奪三振10度(当時、連盟表彰はなし)と数多くのタイトルを獲得、プロ野球界唯一の400勝投手、金田正一氏である。
当時、キャンプでのチーム練習は13時ごろに終わったという。だが、この終了時間に、当時の金田氏が吠えたのだ。末次氏が語る。
「『なんだもう終わりか! ダメだよこんなんじゃ、何やってんだお前ら』って。それから王さん長嶋さんも走るようになった。金田さんのV9の貢献って大きい。だからみんな練習するようになった。あの人もよく動いてたから」
これに大久保氏が持論を述べる。
「強いチームは、『やろう』ってなると真に受けてみんなやるじゃないですか。弱いチームは『何のためにやるんですか』ってのが先にくる」
アーリーワークを取り入れるなど、練習量には定評がある大久保コーチ。今のところ巨人の選手は疑問を抱かず練習に励んでいると、大久保コーチは言う。つまり「強いチーム」の証だ。
金田氏が引っ張ったように、大久保コーチの大喝で巨人が再び、V9ロードを歩み始めるのか。
(所ひで/ユーチューブライター)