「久しぶりに東海道新幹線『ひかり』に乗ったら外国人が多くて驚いた。『のぞみ』ではそんなことがないのに…」
最近、あるビジネスマンからそんな話を聞かされた。
普段はのぞみしか利用しないが、仕事で浜松駅に行くことになり、ひかりを利用したのだという。この時、乗客の多くが外国人だったことに驚きインバウンド消費の復活を実感したという。
ただ、ひかりに多くの外国人が乗っているのはJRグループ6社が共同で提供している「ジャパン・レール・パス」が関係している。
ジャパン・レール・パスは新幹線を含むJRグループの全線や一部の私鉄、JRバス、一部のフェリーが乗り放題になる、いわゆるフリー乗車券。期間は7日、14日、21日間があり、それぞれにグリーン車用と普通車用が用意されている。
料金は7日間の普通車用なら2万9650円と、お得度は高い。利用したいと感じた人も多いはずだが、残念ながら「外国から『短期滞在』の入国資格により観光目的で日本を訪れる外国人観光客」、つまり外国人観光客しか利用できない。
このパスは新幹線も利用できるが、東海道新幹線の「のぞみ」と山陽・九州新幹線の「みずほ」には乗車できないため、このパスを持つ外国人観光客は「ひかり」や「こだま」に乗車しているというわけだ。
お得なきっぷとして多くの外国人観光客が利用し、2019年には販売数が前年の2倍にまで増えた。コロナ禍が去った今、外国人観光客は増加しており、ジャパン・レール・パスも利用者が増えているのは確実。今後もインバウンド需要の増加に貢献してくれそうなのだが、10月1日午前4時に価格改定を行い、大幅に値上げされることが発表されたのだ。
7日間の普通車用は5万円になり、21日間の普通車用は6万6200円から10万円に大幅な値上げとなる。ただ、今のパスから変更があるという。鉄道ライターが説明する。
「これまで利用できなかったのぞみ、みずほを、『のぞみ・みずほ利用券』を購入すれば乗れるようになりました。利用券は東京と新大阪間が片道4960円で、東京と広島が6500円。しかし、これまでのぞみで東京から新大阪まで行くと乗車券と特急券で1万3870円かかったのに比べれば安いものの、このせいで値上がりしたと考えると利用者は納得できるかどうか…。値上げ後はジャパン・レール・パスを購入しないという外国人も出てくるでしょう」
同パスを利用しない外国人観光客が増えれば、旅の流れが変わる可能性がある。
「これまではジャパン・レール・パスで特急列車に乗って、地方の観光地を訪れる外国人も多かったと聞きますが、足が遠のくかもしれません。京都や北海道などの主要な観光地しか行かないという観光客が増えるでしょう」(前出・鉄道ライター)
日本の観光地に大きな影響を与えるかもしれないジャパン・レール・パスの値上げ。10月1日以降の影響を見守るしかない。