2月12日、8大タイトルのひとつ・王将戦で3度目の防衛を目指す渡辺明三冠を4連勝で下し、「藤井聡太五冠」が誕生した。19歳6カ月での五冠達成は、羽生善治九段が保持していたこれまでの最年少記録(22歳10カ月)を大幅に塗り替えることとなり、またひとつ将棋界に金字塔を打ち立てた。
過去に五冠を達成した棋士は3人。大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、そして羽生善治九段である。藤井五冠は記者会見でこの先人たちと肩を並べたことに対して、
「本当に時代を築いた偉大な棋士ばかりなので光栄に思います。自分の場合はまだまだ立場に見合った実力が足りないかなと思うので、今後さらに実力をつけていく必要があるかなと思います」
とコメントしている。
ただ「本当にそうなの? それって謙遜で、実際には史上最強なんじゃないの?」というふうに考えるファンは多いのではないか。それほど現在の藤井五冠の強さは圧倒的だ。
そこで2月22日発売の「週刊アサヒ芸能」では、将棋界で唯一の「永世七冠」の称号を持ち、タイトル獲得合計歴代1位の99期を誇る羽生九段の全盛期、すなわち七冠達成前後の強さと、現在の藤井五冠を徹底比較。誰もが気になる「史上最強の棋士」を決めるべく、誌上シミュレーションを開催。
ひとまず、藤井五冠と羽生九段の直接対決の勝敗について見てみよう。
公式戦での初対戦は18年2月の朝日杯将棋オープン戦準決勝。当時弱冠15歳の藤井五冠が勝利し、その後朝日杯を制している。公式戦通算成績では、藤井五冠の5勝1敗。非公式戦を含めると8勝2敗になる。
つまり10代の藤井五冠とアラフィフの羽生九段を比較した場合、軍配は明らかに藤井五冠に傾く。しかし、ベテラン観戦記者がこれに反論。
「将棋の世界では、10代から20代前半までが最も伸びる時期で、『若い棋士が強い』というのは常識です。羽生さんは今年度、名人在籍時も含め29年間維持した将棋界最高峰の『A級』から陥落することが決まりましたが、初タイトル獲得から30年以上、51歳の今日まで常にタイトル争いに絡み続けていることの方が異常なこと。羽生さん自身も、過去にインタビューで『若い頃のほうが瞬発力、発想力は高かった』と答えていますし、個人的にも、若かりし羽生さんなら今の藤井さん相手にでも『羽生マジック』で勝利をもぎ取るんじゃないか。そんなふうに感じます」
2月22日発売の「週刊アサヒ芸能」3月3日号では、現役棋士のコメントも交えて、時空を超えた将棋界最強棋士が、はたしてどちらかを徹底議論している。