作戦面においても伏線が張り巡らされていた。
2月11日の阪神との練習試合では、相手先発の藤浪晋太郎(27)に対し、初回に3者連続セーフティーバントを試みる奇策が炸裂した。
「スクイズを想定しているのでしょう。三者凡退の結果に終わりましたが、藤浪の160キロに迫る荒れ球はスクイズの練習に打ってつけ。後日実施された、テニスボールを使用した本塁へのスライディング練習もそうでしたが、スクイズ、ホームスチールと、今季は1点をもぎ取って、投手力で守り抜く野球を徹底する意識を高めています。そのため、監督自身も守ったセンターで、足が速くナンバーワンの強肩という五十幡は求めている野球を体現できる象徴であり、早くからの理想形『4番・五十幡』も現実味を帯びてきた。得点圏にランナーが溜まった状態で転がせば1点、慌てた相手がミスをすれば2点入ります」(スコアラー)
新監督就任時に宣言した「ノーヒットで点を取る」は本気も本気のようだ。
「今、選手たちは、自分たちが特別な野球をやらせてもらっているという優越感があるほどです。新庄監督はこれまで彼らが『やるな』と言われてきたことでも『やれ』と教え、端からできないと思っていることでも覚えればできると、トップ技術を教えてくるから選手たちの目の色が変わっている。監督が『とにかく楽しめ』と声を大にし、2軍までが気合い十分で調子づいています」(スポーツ紙デスク)
一方、蚊帳の外に追いやられる選手がいるのもプロ野球の常。目下、次なるノンテンダー候補として名前が挙がるのは、中島卓也(31)だという。実は開幕前のトレードがささやかれており、
「追い込まれてからもファウルで粘るのが中島の売りでしたが、近年はカットできずに空振りする場面が目立ちます。2年目の細川凌平(19)やドラフト3位の水野達稀(21)の台頭が著しいため、完全に構想外となりました。ショートが手薄な阪神や1軍クラスのキャッチャーがダブついている巨人にトレードを持ちかけているともっぱらです。監督同士が言葉を交わすことの多いオープン戦でコミュ能力の高い新庄監督がシーズン目前の電撃トレードを決めてくるかもしれません」(スポーツ紙デスク)
2月24日には室伏広治スポーツ庁長官(47)を臨時コーチに招いた。2泊3日の行程で、メインの公務である23日と25日の間に挟まれた同日は「技術指導及びスポーツ庁施策に関する講義を行う」という、取って付けたような理由での訪問。もはや、行政をも動かしてしまう新庄監督の影響力や恐るべしだが、
「3年後には自らがスポーツ庁長官になっている可能性も否定できない。いやはや、その漫画みたいな実行力は、未来の総理大臣候補でしょう。まさに下馬評を覆してチームを優勝に導いたりでもしたら、もしかして‥‥」(スポーツ紙デスク)
そのカリスマ性が、弱小チームの力を押し上げてしまいそうな勢いである。