米国のバイデン大統領は5月22~24日まで日本を訪問し、日米豪印による「Quad(クアッド)」首脳会議など、精力的に日程をこなした。クアッド首脳の共同文書では初めて安全保障に特化した章を設け、中国の海洋進出など覇権主義的な行動を抑制する姿勢を強調した。
また、23日の日米首脳会談後の記者会見では、中国が台湾に侵攻した場合、米軍が軍事的に関与するかどうかを問われたバイデン大統領は「イエス」と明言。「それが我々のコミットメント(誓約)だ」とも述べた。
今回の訪日について、外務省関係者は「事前にすり合わせた以上の成果だ」と満面の笑みを浮かべる。その一方で「日本をおもんぱかったサプライズが多すぎた。その意図がわからない」と、与党関係者は首をひねる。
というのも、昨年11月に米国家安全保障会議(NSC)内に設置された「タイガーチーム」と呼ばれる特命班が対中外交にも乗り出した、という話があるからだ。
タイガーチームはロシアのウクライナに対する軍事行動について、サイバー攻撃から政権転覆を狙った本格的な侵攻まで幅広い事態を列挙し、在キーウのアメリカ大使館の安全確保や具体的な対露制裁などの対応策を示した。マスコミ対策も含めた情報操作も立案し、反プーチンの国際世論を形成することに寄与したのだ。
その手際の良さは、ロシアの通信社スプートニクが今年4月22日、英語サイトで「ホワイトハウスはCNNとブルームバーグの幹部をNSCの会議に出席させ、政権運営に貢献していると錯覚させることで、事実上の検閲をしている」と皮肉るほどなのだ。
そのタイガーチームが今回のバイデン訪日のシナリオを描いていたならば「かつてのニクソン大統領のように、水面下で電撃的な米中首脳会談を仕掛けているのでは」と警戒する声が出るのもうなずける話である。
(健田ミナミ)