家族をテーマに作品を撮り続ける是枝裕和監督(60)。24日より日本公開される初の韓国映画「ベイビー・ブローカー」(GAGA)では封印しているが、隠れた「艶描写」の名手としても誉れ高いのだ。
第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された監督作「ベイビー・ブローカー」は、主演のソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞。さらには、「人間の内面を豊かに描いた作品」に贈られるエキュメニカル審査員賞にも選出されるなど、下馬評を上回る注目度だった。
「実は、是枝監督は韓国映画のファン。主演のソン・ガンホに対するリスぺクトを口にしていたし、今作は助演だが、ぺ・ドゥナは是枝作品で主演作もあり、ヌードも披露している間柄。韓国は国策として映画振興を進めていて、映画製作に適している環境なので、是枝監督もこだわりなく監督を引き受けた」
そんな是枝監督は、これまでの作品でも生活感溢れる官能シーンを巧みに織り込むことで定評があった。
「中でも世界的な評価を確立した『万引き家族』(18年公開)こそが、是枝エロスの真骨頂です」
と力説するのは、映画評論家の秋本鉄次氏だ。
「生活感の中にあるエロス描写が、実に素晴らしい。リリー・フランキーと安藤サクラという隣にいそうな中年夫婦が、四畳半の畳の部屋で夏の日にまぐわっているわけです。なんか背中にキスして笑い合ったり。どこにでもある平凡な日常をサービスカットがあるわけでもなく、かつ必然性があって入れてくるのが、監督の世界観であり、好きな性描写なのでしょう」
ぺ・ドゥナ主演の09年公開「空気人形」(GAGA)は、ある日「私は心を持ってしまいました」と人間のように暮らすようになった「空気人形・のぞみ」の設定。いわゆるラブドールに扮し、奇妙なエロスを醸し出す怪作だ。板尾創路演じる人形の持ち主である秀雄、ARATA演じるレンタルビデオ店員・純一とペ・ドゥナの関係性と絡みが、なんとも切なくスケベそのものなのだ。秋本氏が続ける。
「この作品は原作のテーマそのものがエロス。ファンタジーエロスは是枝作品の中では異色作ですが、こういうストーリーも撮れるという意味では、非常に興味深い。ラブドールの無機質さは怖くもありますが、ペ・ドゥナのメイド服美少女姿のギャップが、そそられます」
意外なところでは、15年公開の「海街diary」(GAGA)だ。綾瀬はるかを筆頭に四姉妹の家族愛と葛藤を描いた作品である。
「特に濡れ場はありませんが、入浴シーンをちりばめ四姉妹を官能的に描くことに成功。特に次女役の長澤まさみをエロス担当に任命。徹底的に色っぽく撮ることにこだわり、長澤の代表作になりました」(映画ライター)
大物女優たちからも慕われるのは、かくも「エロく撮れる」からなのだ。