広島の秋山翔吾獲得は、次期政権への布石という見方が強まっている。
元MLBレッズ・秋山の入団記者会見が6月30日、広島のマツダスタジアムで行われた。3年契約で、出来高払いを含めて総額5億円は、広島としては破格の条件といえる。
ポスティングシステムを利用してカブス入りした鈴木誠也の譲渡金は、推定1400万ドル超。円安の昨今を考えれば、19億円にもなる。大盤振る舞いをしても補って余りある金額だが、秋山を獲得したのは別の思惑もあるという。
スポーツ紙遊軍記者が、次のように解説する。
「このままいけば、佐々岡監督は今季限りで勇退する。その場合、次期監督の最有力候補は、OBの新井貴浩だといわれています。ある意味、その新井へのプレゼントでしょう。まだまだ来季以降も主力として活躍できる秋山獲得に名乗りを上げたのは、そのためです」
広島には「一度、FAで国内の他球団に移籍した選手を戻さない」との不文律があった。実際、巨人に移籍した川口和久、江藤智、大竹寛などは、指導者としても広島に復帰していない。
だが、新井だけはその方針の適用外だった。新井は14年オフ、阪神から推定年俸7000万円を提示されたが、自ら自由契約を申し出て退団。再び赤ヘル軍団の一員になることを許されている。戦力としてもそうだが、新井の人柄を松田元オーナーが高く評価してのことだ。推定年俸5000万円という、阪神を下回る条件での入団は「将来の監督手形があったため」と言われたことも事実だ。
新井が監督に就任すれば、さらなるビッグプロジェクトが現実味を帯びてくる。
広島というチームは、古くはドミニカに野球学校を設立するなど、海外志向が強い球団である。当然、MLB移籍をもくろむ選手も多く、その第1号が黒田博樹だった。広島は人気と実績を兼ね備えた黒田が現役引退してからは再三、指導者としての入閣を打診したとの情報がある。だが、本人は二の足を踏んでいる。それが新井監督の誕生で、一歩も二歩も前進する可能性が高い。
「球団としては、黒田のメジャー体験を若い世代に残したいと思っている。これまで再びユニホームを着ることに難色を示してきた黒田を指導者として戻ってこさせるには、仲がいい新井が要請するしかない」(球団関係者)
秋山の加入で、CSに出場できるセ・リーグ3位を確保できればベターだが、勝負はその先。それが今回の獲得目的のひとつなのだ。
(阿部勝彦)