2年連続でV逸必至の巨人に、大物OBの名前が急浮上している。それは工藤公康前ソフトバンク監督だ。在京スポーツ紙の遊軍記者は、次のように説明する。
「昨年オフ、原辰徳監督は3年契約を結んだばかり。通常なら1年で契約を打ち切るのはあり得ない。だが、巨人というチームはあの王、長嶋のONでさえ成績が振るわなければ、平気でユニホームを脱がせる伝統がある。原監督も例外ではないと思う。最近は後任として、工藤氏の名前がささやかれている」
常勝を義務付けられる巨人で、原監督の実績は申し分ない。9度のリーグ優勝に加え、チームを3度も日本一に導いている。球界を代表する名監督のひとりといっていいだろう。
だが、安定した長期政権のため、後継者が育っていないのが実情だ、桑田真澄投手チーフコーチ、元木大介ヘッド兼オフェンスチーフコーチ、阿部慎之助作戦兼ディフェンスチーフコーチらの名前も取りざたされているが、いずれも決め手に欠けているのが実情である。
そこで白羽の矢が立ちそうなのが、工藤氏だ。選手としても指導者としても、工藤氏ほど優勝経験が豊富な人間はそういない。
選手としては西武、ダイエー(現ソフトバンク)、巨人の3球団で14度のリーグ優勝、11度の日本一を経験している。また、ソフトバンクの監督として、7年間で3度のリーグ優勝、5度の日本一に導いている。まさに、希代の「優勝請負人」だ。
巨人というチームは、生え抜きの4番打者もしくはエースと呼ばれた投手経験者が指揮を執るのが基本路線とされている。だが、生え抜きでこそないが、巨人でもローテーションの一角を占め、7年間プレーした実績を持つOBである。
07年、横浜から巨人にFA移籍した門倉健の人的補償プロテクト枠28人に入らず移籍を余儀なくされ、遺恨が取りざたされた時期もあった。だがその後、工藤氏が「自分がフロントだったら、43歳の選手をプロテクト枠には入れない」と理解を示しており、就任へのネックにはならない。
工藤監督が誕生するかどうかは、自らの退任後にGM就任をもくろむ原監督の動向次第だろう。ただ、球団内には一定の反原勢力もいる。その勢力を押し切り、原監督がGMへとスムーズに移行できれば、工藤監督就任へのカウントダウンが始まりそうだ。
(阿部勝彦)