育成制度を、悪質な「選手プロテクト」に利用──。非難の声が上がっている原巨人に、一部の球団から「目からウロコだ」と「称賛」する声が出始めている。
平内龍太、中川皓太、高橋優貴、高木京介、梶谷隆幸、立岡宗一郎など、支配下の11人を自由契約にした上で、改めて全員と育成契約を結び直す方針だというのだ。
「FAで高年俸選手を獲得した場合、人的補償リストに載せるのは支配下選手。持っていかれては困る選手は、そこから外しておこう、というものでしょうね、これは。過去に、プロテクトから漏れた長野久義や内海哲也を持っていかれた例もあるので」(スポーツ紙デスク)
資金力が豊富な上、今季の最終戦で、オリックスに優勝をさらわれ、来季のペナント奪回が最重要課題のソフトバンクは、巨人のやり口に追従する可能性が大きいという。
ソフトバンクは来季からの4軍を新設した。大学や社会人チームなどとの実戦を増やすことで、育成選手の試合経験を積むことなどが目的で、今ドラフトでは14人の育成選手を指名するなど、4軍に本腰を入れている。
在阪スポーツ紙ベテラン記者が解説する。
「3軍の小川史監督が4軍監督に配置転換になり、中田賢一投手コーチ、笹川隆内野守備走塁コーチを3軍から4軍に回したように、本気です。ただ、3人では手が回らないのが実情。巨人の梶谷のような、1軍で実績がありながら、故障がネックとなり育成を利用してチームに残した選手にはある程度、4軍の選手の指導も任せられる。4軍選手にとっても、1軍で活躍した選手からの情報を聞くことは大きなプラスになりますからね」
孫正義オーナーや王貞治会長は常々、巨人の9連覇をしのぐ10連覇を達成するような常勝軍団に育て上げ、MLBのワールドシリーズで優勝したチームとの間で、真の世界一を決める戦いを実現させる、との夢を抱いている。しかし、常勝軍団を築くために戦力を底上げし、新陳代謝を図るために、今後は大量の選手獲得が必要となってくるだろう。
さるパ・リーグ球団の編成担当は、
「ソフトバンクはMLB入りが有力な千賀滉大や甲斐拓也、牧原大成をはじめ、多くの育成出身選手が活躍している。今季も藤井皓哉、田上奏大など4人が支配下登録されたように、育成枠を使うのがうまい。それでも10年連続でペナントレース、CS、日本シリーズに勝ち続けるには、今の支配下登録選手、育成選手だけでは間違いなく足りない。もっと選手が必要となってくるだろう。実績がある選手を育成にして、数が増えてくる4軍の指導も兼ねさせるのはうまい手だと考えても不思議ではない」
巨人の育成枠「悪用」に対して選手会は非難囂々だ。だが、さすが球界の盟主、悪知恵にたけているとの妙なお褒めの言葉があるのもまた、事実なのだ。
(阿部勝彦)