9月21日。ベッドから降りる姿が弱々しく見え、トイレがある1階までの階段を降りる動作も緩慢で慎重な感じ。尿は普通の量、ウンチは踏ん張って長めを1個だけ。トイレ用の猫砂は臭い取りのおからが入った緑色の粒の細かいもので、ジュテはトイレを済ませた後は、いつものように入念に砂をかけた。
ところが、ここからがまた変だった。玄関脇の畳の部屋にゆっくり入って行って、むせったのか、嫌な空咳をしている。そして少量だが、液体を吐いてしまった。体が辛いのか、しばらく動かずにいたが、落ち着いてからまたベッドに戻って行った。
「ジュテ、大丈夫かしら」
と、ゆっちゃんは心配そうだ。
12時、ジュテを連れて、S動物病院に検査の結果を聞きに行く。
担当は女性のK先生になったようで、この日も説明してくれたのはK先生。診察台に乗ったジュテの体重は3.9キロ。5日前に比べ、200グラムも減っていた。
結果はよくない。いや、最悪だ。
「ジュテちゃんのシコリは、上皮性悪性腫瘍です。腺ガンかもしれませんが、はっきりとはわかりません。慢性好中球炎症を起こしています。動物は病気や感染症などになると、白血病の一種の好中球が守ろうとして増えるのですが、ジュテちゃんの場合、それが慢性的に増えている状態です」
腫瘍には上皮系、非上皮系があり、上皮系は表面を覆う細胞、非上皮系は間葉ともいわれる一種の結合組織で、上皮より潜った細胞ということだろうか。非上皮系にはリンパ腫、肥満細胞腫、肉腫などがある。
検査の流れとしては、まずFNAといって、内視鏡などで細胞を取って腫瘤を観察する。ジュテはこの検査で異常がわかったということだろう。
ちなみに、この段階では生検ではなく、細胞診というようだ。次に麻酔をしてCT、MRIなどを経て細胞をより詳しく調べるのが生検で、これをやってから確定診断になる。
「猫に麻酔ですか。大丈夫なんですか」
「ジュテちゃんの場合は体力が落ちている可能性があるので、状態を見て判断するしかありませんね」
「CTとかMRIはどんなふうに?」
「それはここではできないので、この前、お話した大きな病院を紹介することになります」
しかし、検査はこれで終わるわけではない。さらに腫瘍の広がりを調べるために、レントゲンや血液検査を行う。
「広がりを調べるのは、肺の機能が大丈夫かを診るためです。咳をするとか、呼吸数がどれくらいか、速くないかとか」
咳といわれて、今朝ほどのジュテの空咳を思い出していた。検査に耐えられる体力があるのだろうか。
ジュテは診察台の上でおとなしくしていた。僕やK先生の顔を時々、のぞき込むようにしている。ジュテは下の猫たち、ガトーやクールボーイと比べものにならないくらい利発で、人間の顔色をうかがうようなところがある。もしかすると、K先生との会話も理解しているのではないか。
そんな思いの中、K先生の説明はさらに続いた。
(峯田淳/コラムニスト)