一昔前、サラリーマン風の男性が小指を立て「私はコレで会社を辞めました」というテレビCMが話題になったことがある。それを地で行くことになったのが、人気アナウンサー・小島一慶の、外国人女性との「ホテル密会現場」発覚に端を発する騒動だ。
小島は68年にTBSに入社。独特の甲高い口調と親しみやすい語り口で人気を集め、ラジオでは「パックインミュージック」、またテレビでは「ぴったしカン・カン」などの司会を担当した。
89年にTBSを退社すると、テレビ朝日と1年のフリー契約を結び、91年4月からの「モーニングショー」の新司会者をはじめ、昼の生番組「ホットライン110番」、さらには深夜の生番組「プレステージ」のMCにも抜擢される。まさに順風満帆を絵にかいた船出を飾る…はずだった。
しかしこの年の3月、写真誌「FOCUS」に小島と外国人女性との密会現場写真が掲載された。2日後の15日午後4時、密会現場となった東京・六本木の全日空ホテルに隣接する「六本木アークヒルズ」内のレストランで、小島が緊急記者会見を開くことになる。
憔悴した表情で現れた小島は、
「何から話していいのかわかりませんが、自分の愚かさに恥じ入っております」
報道陣を前に深々と頭を下げると、記事が出た3月13日の時点で、テレビ朝日側には全てのレギュラー番組降板を申し出たことを報告。
「自分にとってはいちばん好きな、マイクロフォンのあるところから立ち去っていくことで、どうかご勘弁をいただきたい」
そう話し、大粒の涙を流したのだった。
だが記事には「現場写真」とともに、小島がパーソナリティーを務める番組スタッフ女性との不貞が原因で、この女性が夫と離婚していた、というショッキングな内容が掲載されていた。その点を指摘された小島は、ガックリとした表情で肩を落とす。
「書かれていることが間違っているとも、合っているとも言いません。一切、弁明はしません。私はバカです。どうしようもないなぁ…」
だが、TBS時代から愛される人柄で友達も多かった小島は、謹慎を経てイベント司会者として復帰。私が「あの人は今…」的なテーマで、イベント会場で小島に話を聞いた際も「ごめんなさい。新たな気持ちで再出発しているので」と、丁寧な口調で取材は断ったものの、そこには人柄の良さが表れていた。
ところが、である。そんな小島が09年1月、なんと婦女暴行容疑で刑事告訴されていたという、耳を疑うようなニュースが飛び込んできたのだ。
この事件は後に示談が成立。告訴は取り下げられたが、関係者に与えたショックは大きかった。まさに「私はコレで芸能界を辞めました」となってしまったのである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。