「春の珍事」なんて呼ばせない! プロ野球のペナントレースは、開幕から広島カープとオリックス・バファローズが快進撃を続けている。両球団ともリーグで最も優勝から遠ざかっているが、今季のベンチ裏はお祭りムード。たまりにたまったマグマのような熱気が充満しているのである。
広島は実に1987年以来となる、27年ぶりの開幕から3カード連続勝ち越しで開幕ダッシュに成功した。4月8~10日の巨人3連戦こそ1勝2敗と負け越したものの、「一歩もひけを取らない戦いをしていた」と話すのは、カープOBで野球解説者の小早川毅彦氏だ。
「第1戦で巨人先発の内海から丸が頭部に死球を受け、その場に倒れ込んだのですが、すぐに立ち上がりプレーを続行、すかさず盗塁を決めました。彼のプレーが象徴するように、昨季、16年ぶりのAクラス入り、初のCS出場を果たした勢いに乗って、今季はさらに上を目指す。チームにはそんな雰囲気が漂っています」
4月10日の広島戦に先発した巨人の菅野は、試合後、番記者にカープ打線の印象を聞かれ、こう語った。
「1、2番を打つ丸と菊池はファウルで粘って球数を多く投げさせて、出塁すると足を絡めてくる。エルドレッドの調子もいいですし、後ろを打つ梵さんも確実性のある打者だし、松山さん、堂林は長打力もある。そこにキラまで調子を上げてきたら‥‥。投手からすると息の抜けないやっかいな打線ですよ」
もちろん、広島の一番の強みは投手陣の層の厚さだ。小早川氏が、その充実ぶりをあげる。
「先発陣には、前田、野村、バリントン、さらに即戦力ルーキーの大瀬良、九里といった2桁勝利を期待できる逸材がそろい、さらに篠田や福井といった先発候補も控えている。一方で、救援陣も一岡、永川、今村、中田、ミコライオと、コマはそろっています。内・外野ともに守備力も高いので、大量失点する可能性は低い。巨人と互角に戦えるだけの戦力が整いつつありますね」
カープ番記者も投手陣の競争激化がチームに好影響をもたらしていると語る。
「開幕2戦目に登板し、12球団ルーキー一番乗りで白星を飾った九里は、『10勝は最低ノルマ。大瀬良よりも多く勝つ』といきまいている。先日、巨人戦初勝利をあげた3年目の野村もオフの自主トレからハイペース調整を続け、15勝を目標に掲げています」
巨人にFA移籍した大竹の人的補償で入団した一岡も、「広島で活躍することが巨人への一番の恩返し」と今シーズンの飛躍を誓っている一人だ。
「先日の試合前にも原監督から『ジャイアンツのユニホームも似合っていたけれど、カープのユニホームも合っているじゃないか。貪欲に上を目指してやってくれよ』とじきじきにエールを贈られ、ガゼンやる気になっていた。内海や杉内など、ベテランが中心の巨人投手陣に比べ、広島は伸びしろも期待できますよ」(カープ番記者)