パ・リーグに目を向けてみると、戦前の下馬評を大きく覆し、乗りに乗っているのがオリックス・バファローズだ。
昨シーズン終了直後、森脇浩司監督(53)は「ドラスティックなチーム再編をしなければ優勝は狙えない」と断言し、李大浩〈イ・デホ〉、バルディリスといった主砲の流出もいとわず、実行に移した。
オリックス出身の野球解説者・パンチ佐藤氏も、
「まさに森脇監督が断言したとおりの“血の入れ替え”が行われました」
と興奮を隠さない。快進撃を続ける古巣の強さの秘密について、真っ先に森脇監督の“品格”をあげた。
「現役選手として近鉄に在籍した当時の森脇監督が、藤井寺球場の室内練習場で黙々と打撃練習をしていた時のこと。薄暗い柱の裏に人影を感じ、目を凝らして見ると、そこには名将・西本幸雄監督の姿があったといいます。まだ無名の若手の練習をちゃんと見てくれていることに感動し、この時の経験が監督の指導者としての原点になっているそうです。今季のキャンプでも若手選手に対してみずからノックを打ったり、グラブさばきを教えたり、ベテランの谷の特打ではボール拾いを務めたり、ルーキーからベテランまで分け隔てなく選手に接していましたからね」
森脇監督は、春季キャンプ前日のミーティング時に選手たちにゲキを飛ばし、「微差は大差」「維持は後退」「準備が全てを決める」という3点をあげ、キャンプ、オープン戦を通じて、僅差のゲームを競り勝つために必要な考え方や態度を選手に植え付けたという。ここまでのオリックスの戦いぶりを見ると、そんな“接戦を粘り勝つ”森脇イズムは確実に浸透していると言えるだろう。
野球解説者の高橋雅裕氏もこう絶賛する。
「好調の最大の要因は、投手陣。12試合を終えて(4月11日時点、以下同)チーム防御率は両リーグトップの2.22。特に、勝ちゲームの7回、8回、9回を任される佐藤、馬原、平野の安定感が際立っています。さらに、先発投手の出来しだいでは6回から比嘉を投入する選択肢もある。しかも、先発ローテーションに入るエースの金子、西は完投能力があるため、彼らが登板する時はリリーフ陣を休ませることができる。長丁場のペナントレースを戦えるだけのピッチング・スタッフがそろっているんです」
さらに高橋氏は、今季のオリックスのキーマンとして西武から移籍したヘルマンをあげた。
「昨季リーグ最高の出塁率・4割1分8厘を記録、西武時代の2年間で計81盗塁のヘルマンの加入により、足を絡めた野球ができるようになりました。森脇監督は走塁の先生役に任命し、ヘルマンも選手たちに積極的にアドバイスをしているようです。4月2日の仙台で行われた楽天戦で、高卒ルーキーの松井裕から巨漢のペーニャが盗塁成功するなど、足で松井を攻略したのですが、その裏ではヘルマンの助言があった。またヘルマンは陽気な性格で、ペーニャや1年目のベタンコートのよきアニキ分として面倒も見ています」
ソフトバンクをクビになったそのペーニャも、12試合で7発と本塁打を連発し、好調を維持している。
「昨年、右半月板を手術したペーニャを見切ったソフトバンクのフロント陣は、このペースでホームランを量産したらバレンティンの記録を抜いてしまうので、王貞治球団会長の顔に泥を塗りかねないと戦々恐々としています」(スポーツ紙デスク)