制作発表は別にして、記者会見には何か拠所ないような事案が発生し、マスコミ各社から問い合わせを受けて個別対応ができないため会見となる、というパターンが多い。
特に事案がスキャンダルの場合、記事が出る前に事務所が会見を開くことがある。本人の口から語らせることで記事のトーン自体を変え、さらには1社だけの「スクープ」を潰すこともできる。そんな理由による会見も、珍しいことではない。
その代表が、99年10月5日に所属レコード会社で行われた、人気アイドルグループ「SPEED」の、電撃的な解散発表記者会見だったのではないだろうか。
SPEEDは96年に「Body & Soul」でデビューした、島袋寛子、今井絵理子、新垣仁絵、上原多香子からなる4人組グループだ。全員が安室奈美恵やMAXを生んだ沖縄アクターズスクールの出身で、アイドルとは思えぬ完成されたパフォーマンスが人気を呼んだ。
そんなこともあり、午後4時、4人揃っての記者会見には200人を超える報道陣が集結。それぞれに名前が記入されたプレートの前で、マイクに向かった彼女たちは、
「昨年8月くらいから解散という話は出ていて。みんなにとって、すごくいい挑戦だと思うし、1人でも頑張ろうと思います」(今井・16歳)
「それぞれの夢があって、私はアメリカで勉強したいと思っています」(新垣・18歳)
「1人でデビューした時は心細かったけど、4人でやってこれてよかった」(上原・16歳)
と、将来への抱負を語ったのだが、唯一、島袋(15歳)だけは、
「沖縄で店を開くのは夢だったりしますが、それは(解散後の来年)3月の後の期間でじっくり考えます」と、いまひとつ元気がなかった。
それもそのはずだ。そもそも解散に至った理由が、島袋の恋愛に所属事務所が反対し、それに反発した彼女が芸能界引退を申し入れたことにあったのだから…。
島袋は元ジャニーズJr.のタレントで、その後、同じ系列の事務所に所属するAと、2年前から交際。しかし事務所はこれを認めず、Aを解雇した。
猛反発した島袋は「彼をクビにするのなら、私も引退して沖縄に帰る!」と抗議し、引き留めるメンバーの声も振り払って、引退を決意。その一部始終が会見翌日の6日、写真誌「FOCUS」に掲載されることをキャッチした所属事務所がこの会見を仕込んだ、というのである。
しかし、会見でのしどろもどろな話しぶりがアダとなり、「SPEED電撃解散『島袋15歳の選択』への大トラブル」と題したその記事が大いに注目されるのだから…。
ちなみに、島袋はAと別れた後、歌手として復帰。17年2月には、12歳年下の俳優・早乙女友貴と結婚した。2人は出会ってわずか7カ月で婚約。まさにSPEED婚だった。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。