公明党は一連の旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題が創価学会に飛び火することを警戒している──。前回はその警戒感の背後に横たわる「蒸し返されたくない過去」として、50年代初頭に始まった創価学会員による大規模入信勧誘運動、いわゆる「折伏(しゃくぶく)闘争」(「折伏大行進」とも呼ばれる)を取り上げた。
だが、公明党にとっての蒸し返されたくない過去は、折伏闘争だけではない。
例えば68年の参院選では「新宿替え玉事件」をはじめとする不正投票事件で、創価学会員らが多数検挙されている。一連の事件は、他人に郵送された不在者投票用紙を郵便受けから盗み出すなどして、創価学会員らが本人になりすまして替え玉投票を行うという、不在者投票制度を悪用した前代未聞の窃盗・不正投票事件だった。
しかし、選挙への不正介入は、完全には改められなかったようだ。
実は今から30年近く前に行われた国政選挙の際、本連載記者の妻(都内在住)は、電話による選挙買収を持ちかけられている。その一部始終は以下のようなものだった。
投票日を目前に控えたある日、かつての職場の元同僚女性から、妻のもとに電話がかかってきた。元同僚女性は「お久しぶり」の挨拶もそこそこに「今度の選挙だけど、公明党に1票入れてくれない?」と切り出した。
この時、妻は元同僚女性が創価学会員であることを初めて知ったが、後々、面倒なことになるのを恐れて「それは、ちょっと…。創価学会にも興味はないし、公明党に入れるつもりもないので」と言って、やんわりと断った。
すると、元同僚女性は「公明党に1票入れてくれたら、謝礼として3万円払うわよ。ご主人も入れてくれれば、2人で6万円。投票日は車で送り迎えするから」と畳みかけてきたのだ。このままでは法律違反行為に加担させられることになる、と感じた妻が「悪いけど、協力できません。主人も同じだと思います」と伝えると、元同僚女性は「どうして? 投票するだけで6万円よ。いいお話なのに」との言葉を残して電話を切った──。
その後、本連載記者が政治関連の取材で付き合いのあった都議会公明党の大物幹部に会った際、善意による忠告の意味を込めて、選挙買収電話の一部始終を伝えた。すると、その大物幹部は困惑の表情を浮かべながら、次のように応じた。
「まだそんなことをやっているのか…。それはマズイな。伝えてくれてありがとう。今後はそうしたことのないよう、関係各方面にしっかり伝えておくよ」
ちなみにその後、元同僚女性からの電話は一度もかかってきていない。