ここで一度、話は飛ぶ。
関西地方の広域組織関係者X氏が、イラつきを隠さずまくしたてる。
「今、全国的にシャブの流通量が減っているんや。知っとったか? 市場に出回っとらんから、元アイドルの逮捕以外に目立ったニュースはないやろ?」
コロナ禍による渡航制限とロシアのウクライナ侵攻によるダブルパンチで、覚醒剤の仕入れルートがズタズタに寸断されているというのだ。
「入ってこなくなっただけやなくて、たまに入ってきても昨年の10月頃から価格が高騰しとるわ。1キロあたり800万円だった仕入れ単価が、今では2500~3000万円にうなぎ登りや。もちろん末端価格も値上げしていて、1グラム2~4万円だったんが、8~10万円に跳ね上がっとる。毎年8月と12月に大きな価格変動があるんやけど、今年の冬はさらに値上がりする見込みやねん」(X氏)
くしくも、世の中の物価上昇のタイミングに合わせて価格が爆騰。一般世間はつゆ知らずの話だが、ジャンキーたちの日常は阿鼻叫喚と化している。違法薬物に詳しいアングラライターが代弁する。
「シャブが手に入らない貧乏人は幻覚症状と戦いながら我慢しています。なんとか気を紛らわそうと大麻(ハッパ)でごまかそうとしていたが、結局、子供だましにすぎない。ハッパは使用後に体が温かくなるが、シャブは冷たくなるもの。要は得られる快感が全然違うんです。貴重なシャブを大事に使わないといけないから、大量に消費する炙りはNG。普段0.2グラムなのを0.1グラムに節約して注射するのが当たり前になりつつあります。すぐにパッカーンと抜けてしまうらしいですが‥‥」
品薄と同時に粗悪品が出回るのは世の常なのか。いわゆる“混ぜもの”を扱う業者が急増しているという。
「シャブを敷いたアルミホイルを炙って、白い煙が出るやつは上等品や。傾けてシャーッと流れるから『銀紙が走る』なんて言うんよ。ところが、真っ黒の煙が出るのは不純物が混ざっとる可能性大やな。ひどいのは除光液やプラスチックが焦げたような匂いがするもんもある。手口はだいたい同じ。市販の胃薬や風邪薬でカサ増ししとる。体に入れても害はないからな。ただ風邪薬は眠たくなるからシャブとの相性がよくなくて、気をつけなアカン。それを正規の値段で売りよるんやからな」(X氏)
そんなまがいモノに高値が付くのも、前述したように供給網がパッタリ途絶えているのが原因だという。
そして、話は戻る。その打開策となるのが、北朝鮮の“ミサイル乱射”だとアウトロー関係者はささやくのだ──。