そのワケをX氏が耳打ちする。
「今、日本にいちばん出回っとるシャブはメイドイン北朝鮮やな。全体の7割はそうやろう。日本人が米作るみたいに国家事業でシャブを生産しとる。向こうじゃ1グラム1000円台で買えるらしいから、タバコ感覚で炙っとるってな。そんなお国柄だからか、純度がすこぶるええわ。まぁ、1000円のモノがこっちに売り渡せば数万円に化けるんやから、正恩もボロい外貨稼ぎやっとるわな」
北朝鮮政府の外貨獲得機関といえば、麻薬や違法タバコの製造・販売からサイバー攻撃による金銭窃取をもくろむ「朝鮮労働党39号室」が知られる。コロナ禍で鎖国さながらの本国とは裏腹に、水面下で動きを活発化させているという。全国紙国際部記者が語る。
「仮想通貨取引所のハッキングや、企業のデータサーバーにウイルスを放ってコンピュータのファイルを暗号化して使用不能にしたのち、元に戻すパスワードと引き換えに身代金を要求する『ランサムウェア』による資金調達が主流で、相変わらず活況を呈している。その一方で、コロナの影響により輸出が止まり、覚醒剤の在庫がダブつき始めたんです。むしろ国内に中毒者が蔓延してしまい、当局による取り締まりが厳しくなったと言います。すでに、大量の在庫をサバくための供給網を再整備している段階だというのです」
“上客”のニッポン闇社会を手放したくはないだろう。それこそ、北は必死の思いで躍起となっているのだ。
「北と日本のシャブ取り引きはかつて『瀬取り』という海上で受け渡しをする方法が主流やったが、近頃は衛星レーダーの技術が進歩したせいで簡単に海上保安庁にパクられるようになりよった。しかも北朝鮮が大量にミサイルを飛ばしよるから、海の警戒レベルが上がっとんねん。シャブで荒稼ぎできへん腹いせの乱射かと思ったが、逆効果やねんな」(X氏)
ただし、その反動か陸路のマークが手薄になっているという。メインは陸続きの中国、もしくはロシアを経由する供給ルートが活発化している状況のようだ。
「中国では、シャブを50グラム以上密輸したら死刑になるわ。10年ほど前に俺の仲間も中国ルートでしくじって何人も殺されとるんやけど、以前から厳しいのは上海、北京、大連なんかの大都市の港だけや。北から中国へ陸路で入ったら、それ以外の港から運ばせればええ。北のミサイル乱射に気を取られとる今なら、スクラップを運ぶ貨物船のコンテナに100キロ単位で紛れ込ませられるやろうな」(X氏)
目下、日本が経済制裁中のロシアンルートも眠ってはいないようで、むしろ中国ルートよりも“安全”だとも‥‥。
「実は円安の影響もあって、北海道からロシアへの輸出は盛んに行われとる。中でも人気なのは中古車。野菜をはじめとするほとんどの品目が輸出できへんけど、なぜか1台600万円以下の自動車は輸出可能なんや。ちなみに7月の輸出額は、21年の3倍やったらしいわ。それだけ貨物船が行き来しよるわけやから、シベリア鉄道経由でシャブを運んじまえば何も不自然なことはないわ」(X氏)
まさかの密輸ルート構築。ミサイル発射実験のみならず、日本は舐められっぱなしというわけか──。