86年、フライデー事件後の記者会見で、ビートたけし(67)は反省を口にしながら、事件後の反響の大きさに驚いたとして、こう続けた。
「やったことというのは、白鷺を鉄砲で撃ったと思ったら、特別天然記念物のトキを撃っちゃったみたいなものでね」
バイク事故を起こした94年には、まだ痛々しさの残る姿で堂々と復帰会見に登場し、
「顔面マヒが治らなかったら、“顔面マヒナスターズ”を結成しようと思います」
と、詰め掛けた記者団、会見を注視する全国のファンたちを爆笑の渦に叩き込んだ。
97年にベネチア国際映画祭にて、「HANA‐BI」で金獅子賞を獲得した際には、トロフィーを受け取った時の感想を聞かれ、
「『なんでも鑑定団』に持っていこうと思った」
と、つとめてあっさり返したものである。
思えばこれまで、たけしの発する言葉で何度笑い、何度感銘を受けてきたことだろうか。何気なく言い放ったひと言ひと言が、「金言」として聞こえてくることさえある。
テレビ・ラジオで30年以上にわたって膨大な数のレギュラー番組を持ち、映画を撮れば話題になり続けてきただけに、一般視聴者たちがたけしの発言を耳にする機会は多かったのだから、ある意味で当然ともいえよう。
一方、こうした公式発言だけが金言だと思ったら大間違いだった。「たけし金言集~あるいは現代北野武秘語録」には、たけし軍団のアル北郷氏がたけしの恥ずかしい部分をあますところなく公開。しかも、すべては“殿公認”である。たとえば、こんな金言を聞いたことがあったろうか。
ベネチア映画祭にて、ブラッド・ピットを間近で見たたけしは、
「あいつ、ケンカ弱そうだな」
とポツリ。また、酒席で映画「ロッキー」の話になれば、
「あいつ(シルベスター・スタローン)になら、ボクシングで勝てる!」
と、真顔で言い放ったこともあったという。何とも負けず嫌いなたけしの“素”が滲み出て、バカバカしくも味わい深い。
さらには、ドキュメンタリー番組を視聴中、映画監督を志望する若者が画面に登場すると、
「なんだ、このバカは!」
と、いきなり全否定から入り、
「だいたい、ハナから映画監督になろうって根性が気にいらないよ!」
と、元も子もないことまで言い出したというのだ。そして、
「こいつは、映画は撮れても漫才はできないだろ」
と畳み掛け、最後にはこんな言葉で勝ち誇り始めたというのである。
「だいたいこいつは、人前でチ○ポ出せない顔だよ!」
こうした裏の「金言」の数々は、まさに側近だから知りえるエピソード。同著によれば、夜中に北郷の電話にかけてきた師匠は、
「おい、たけしだけどよ、今、NHKに出てるやつ、カツラだぞ。名前メモっとけな」
とだけ告げて、電話を切ったという(笑)。
たけしを語るうえで欠かせない貴重な資料となりそうだ。