かつては「YOUは何しに日本へ?」(テレビ東京系)のナレーションのほか、バラエティー番組に出ずっぱりの、ナイジェリア出身のタレントで格闘家といえば、ボビー・オロゴンである。
そんなボビーがさいたま市内の自宅で、同居していた妻からのDV通報により、現行犯逮捕されるという事件が起きた。20年5月16日のことである。
所轄の浦和署に、妻から「顔を叩かれた」として110番通報があり、警察官が現場に急行。ボビーは暴行を否定したが、夫人の証言もあり、その場で逮捕となった。
翌17日に「6LDKのプール付きで、価格は1億2000万円」という自宅を訪ねると、取材に応じた夫人は、
「喧嘩のきっかけは、夫からの嫌がらせでガスを止められたことです。ほかにも、自宅を売りたいから離婚届を書いて今すぐ出て行ってくれと…。家庭という空間で、まるで弱い者いじめされているような状態でした」
憔悴した表情で、長年にわたってDVを受けていたと、その心情を吐露したのである。
逮捕されたボビーは18日朝、50人以上の報道陣が見守る中、Tシャツに短パン、サンダル姿で浦和地裁に送検される。同日夜、浦和署から釈放されたものの、事務所関係者とともに報道陣に一礼しただけで、無言で車中の人となった。
実は私が、頭を下げるボビーの姿を見たのは2度目。1度目は、06年1月25日に所属事務所での乱闘騒ぎで原宿署に連行され、その後に行った謝罪会見である。
前年の大晦日、ボビーはK-1で元横綱の曙に快勝し、格闘家としても一躍、人気者に。ところがギャラの支払を巡り、所属事務所社長に直談判するため事務所を訪れた彼は、意見の食い違いから腹を立てて、机や椅子を投げて大暴れ。あげく、たまたま事務所を訪れていた、鈴木宗男代議士の元秘書であるジョン・ムウェルテ・ムルアカ氏らを巻き込む大乱闘となってしまったのである。
駆けつけた原宿署員により連行されたボビーは、4時間半にわたり事情聴取を受け、2日後の1月27日、ムルアカ氏同席で「和解」会見が開かれた。
「ボタンの掛け違いがあった。本当にごめんなさい」
ボビーはそう言って謝罪したのだが、肝心のギャラ問題については一切語らず。ただ、警察沙汰になったことで、自称32歳としてきた年齢が、実は39歳だったという詐称がバレることとなり、涙を流しながら頭を下げるボビー。その横でムルアカ氏が、
「大家族の間でケンカはよくあることだし、(年齢詐称も)アフリカではよくあること」
と掛け合い漫才を思わせる素っ頓狂なコメントを付け足し、報道陣から失笑が漏れるシーンもあった。
無茶苦茶な日本語と独特のボケで人気を得たボビーだが、さすがにK-1王者の「フザケンナヨ、コノヤロー、バカヤロー」は、シャレでは済まなかったようだ。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。