今の打撃スタイルで最終成績を予測すると、打率2割6~7分、ホームランが20~25本ぐらいでしょう。4番打者がこの数字で優勝争いできるかどうか。首脳陣からすると、不安な数字です。あとは、ここ一番の勝負を決める一打が増やせるかどうかです。
単純に数字だけで比較すると、昨季、楽天を日本一に導いたジョーンズの成績は打率2割4分3厘、26本塁打と、ゴメスでも十分にクリアできる数字でした。しかし、ジョーンズの場合は四球がリーグ最多の105。ボールを見ていく仕掛けが遅いタイプで、打率、本塁打の数字はもの足りなくても、四球の数、存在感で打線の中心として成り立っていたのです。ゴメスの場合は、積極的に振っていくタイプの打者で、ジョーンズほどの四球は奪えないでしょう。また、彼に「仕掛けを遅くしろ」と言うと長所を殺してしまいます。
阪神が苦しいのは「4番・ゴメス」では厳しいとなっても、代わる選手がいないことです。ここまでのトータルは不動の4番としての合格点の数字を残していますが、この先、不振が続けば首脳陣は頭を痛めることになります。もう一人の助っ人、マートンは性格的に4番は務まりません。ボール、ストライクの判定1つでリズムを崩してしまうからです。6月1日の日本ハム戦でも審判の判定への不満でイライラし、プレーに影響させたことで懲罰交代を命じられました。打撃の力量はあっても、気持ちの浮き沈みが大きすぎます。鳥谷も4番タイプでなく、新井貴もベンチから4番は厳しいとの烙印を押された選手。結局、ゴメスと心中するしか道はないのです。
その点、優勝争いのライバルとなる広島は、4番のエルドレッドの調子が落ちてもキラという代役がいます。右打ちと左打ちというだけでなく、振っていくタイプと見ていくタイプのまったく違う2枚を持っているのです。今年のエルドレッドは来日3年目で日本の投手の攻め方にも慣れ、ボールの見極めがよくなったことで、ここまでは3冠を狙えるほどの数字を残しています。しかし、もともと調子の波が荒く、4番打者としては安定感に欠けます。それでも、いつでもキラと打順を入れ替えられるのが強みです。ロサリオも外国人枠の関係から一軍で固定できないものの、力のある選手です。阪神ほどの切迫感はありません。
セ・リーグ3強のもう一角、巨人の新4番のセペダはどうか。今の段階での判断は時期尚早です。評価できるのは後半戦に入ってからでしょう。ですが、ヘッドスピードが速くバットが体に巻きつくように出てくるスイングはさすがです。国際経験も豊富で、初対戦の日本の投手への対応も慣れているでしょう。何よりスイッチヒッターという強みがあります。まだ加入して日が浅いため、伸びしろは十分にあるはずです。
あらためて見渡すと、中日はルナ、ヤクルトはバレンティン、DeNAはブランコと、セ・リーグの4番打者が全て外国人選手という点に、球界OBとしては寂しさを感じます。4番を打てなくなった時が辞める時と考える選手もいなくなりました。プロ野球の地盤沈下を防ぐためにも、真の4番打者を育成しなければいけません。助っ人たちの奮闘を見守りつつ、私も汗を流したいと思います。